
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え…っ! 「失礼だろ」「そう見えてたのか」 コチラが『ばけばけ』モデルの小泉セツさんを「ハーンさんの妾」と書いていた当時の記事です
嫌な展開を呼びそうな梶谷の記事
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、1890年に来日し、『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え、「再話文学」の元ネタとなるさまざまな怪談を語った、妻・小泉セツさんがモデルの物語です。
第16週では、松江新報の記者「梶谷吾郎(演:岩崎う大)」が主人公「松野トキ(演:高石あかり)」や夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」をしつこく取材し、松野家は一躍時の人になってしまいます。
梶谷の記事はかなり売れたようですが、彼はやはり話を大げさに盛っているようで、心配する視聴者も多くいました。
なかには、「やだなぁ…この梶谷の取材がラシャメン呼ばわりにつながるのかなぁ」「梶谷の捏造記事のせいで、トキちゃんがラシャメン扱いされるのかな」「何か贅沢してるとか、悪い評判がたってラシャメン問題浮上するんか?」と、梶谷の記事が原因でトキが今後「洋妾(ラシャメン)」と蔑まれることになるのではないかと、予想する声もあります。
実は、『ばけばけ』公式X(旧:Twitter)で観られる2026年1月放送予定の予告映像には、トキが「ラシャメン トキ」と書かれた団扇を見てショックを受ける場面がありました。もしかすると、梶谷の記事がそういった差別を受けるきっかけになってしまうのかもしれません。
トキのモデルのセツさんは、1891年の夏頃にハーンさんと夫婦になったものの、1896年にハーンさんが帰化して小泉八雲になるまでは、彼と事実婚の状態でした。当初はひどい扱いを受けたようで、、セツさんは晩年、次男の巌さんの妻・翠さんに、かつて周りから「洋妾、洋妾」と言われたことが一番辛かったと語ったそうです。
そんなセツさんは当時、報道でもハーンさんの「妾」だと書かれたことがありました。1891年6月28日発売の山陰新聞(現在の山陰中央新報社の前身)の記事には
「ヘルン氏(ハーンさんの呼び名)の妾は南田町の稲垣某の養女にて、その実家は小泉某なるが、小泉方は追々打ちつぶれて、母親は乞食とまでにいたりしが、この妾というは至って孝心にして、養父方は勿論、実母へも己の欲をそいで与える等の心体を賞して、ヘルン氏より十五円の金を与え、殿町に家を借り受け、道具等をも与え、爾来(じらい:「それ以来」の意味)は米をも与えることとなせりという」
と書かれています。内容としては、孝行者のセツさんがハーンさんから得た稼ぎで、養家・稲垣家の家族や、生家の落ちぶれた母を救ったことを称えているのですが、彼女はハーンさんの妾という扱いになっていました。記事が出たのは、夫婦になったハーンさんとセツさんが武家屋敷(現:小泉八雲旧居)に引っ越してから、6日後のことです。
この山陰新聞は、梶谷が務める松江新報のモデルだと思われます。松江には当時、松江日報というハーンさんに関する記事を多数書いていた別の新聞社もあり、名前はそちらに由来しているのかもしれません。
1882年に創立された山陰新聞は、明治維新後の士族の没落や生活の困窮についても調査して、いくつか記事を発表しており、前述の記事ではセツさんの実母・小泉チエさんが物乞いになっていたことも書かれています。トキの実母「雨清水タエ(演:北川景子)」が物乞いをしていた頃、梶谷が彼女を取材しようとする場面があったのも、このことに由来しているのでしょう。
今後、トキは梶谷の記事のせいで、ラシャメン扱いされてしまうのでしょうか。予告の問題の場面がいつ描かれるのか、気になるところです。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)
