鉄×光で薬づくりはどこまで現実になるのか

今回の研究により、「鉄と青い光を使うことでレアメタルに依存しない高度な不斉反応と天然物合成が可能であること」が示されました。
しかもキラル配位子は従来の約3分の1で済み、主役は地球に豊富な鉄という、資源とコストの両面でありがたい組み合わせです。
名古屋大学のプレスリリースでも、「豊富な資源である鉄とクリーンなエネルギーである光」を強調し、高価なキラル配位子Xの使用量を1/3に削減したことがポイントとして挙げられています。
もちろん今回の研究成果をもって「鉄がレアメタルを完全に置き換えた」と言うことはできません。
それでも、「鉄でもここまでできる」「鉄×光で薬を作る時代が、ようやく設計図レベルで見えてきた」と言うだけの説得力は十分にあります。
贅沢な素材をふんだんに使った高級料理と同じ味を、スーパーの食材と工夫されたレシピで再現して見せたような今回の研究は、化学者たちにとっても心強いニュースです。
もしかしたら未来の世界では、採掘に環境負荷の高いレアメタルではなく鉄と光を用いた方法が一般的になっているかもしれません。
参考文献
「鉄×光」で高価な光学活性物質を1/3に抑える新触媒を開発 レアメタル使わず有用天然物の合成に成功、医薬品開発をもっとエコに
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2026/01/13.html
元論文
A Rational Design of Chiral Iron(III) Complexes for Photocatalytic Asymmetric Radical Cation (4 + 2) Cycloadditions and the Total Synthesis of (+)-Heitziamide A
https://doi.org/10.1021/jacs.5c20243
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

