「後ろに最後は玲央がいる」ベルギー2位浮上のSTVVで日本代表GKがビッグセーブを連発!ホームにこだまるするコールに「このチームで優勝したい」【現地発】
1月18日、シント=トロイデン(STVV)はルーベンに1対0の完封勝利。クラブ・ブルージュがヘントに敗れたため順位が入れ替わり、ベルギーリーグ2位に浮上した。
リズミカルなパスワークで試合の主導権を握ったSTVVは9分、左サイドのスローインから始動した攻撃から先制点を挙げる。右ポケットを突いたMFアルブノール・ムヤの折り返しを、ゴール正面のMFイリアス・セバウイが右足で合わせた。
STVVは「試合をコントロールした前半」、「鋭いカウンターでルーベンを脅かせた後半序盤から中盤」、そして「全員守備で1点を死守した終盤」と展開が変わるなか、息の合ったチームワークを披露した。
CB谷口彰悟主将の「相手をゼロに抑えられたのは良かった。得点チャンスが多かったので、追加点を取れればもっと楽に進めたと思います。でも、こういう展開でも焦れずにキチンと勝ち切れるチカラが付いてきたのは、すごくポジティブな要素かなと思います」という言葉に、STVVが勝ち方を知るチームに変貌したことを感じた。
ルーベンのアタッカー陣は先発出場、交代出場を問わず、パワーと高さがあり、ロングボールや混戦から失点を喫するリスクを常に抱えていた。谷口は特に191センチのソリ・カバ(元ギニア代表)、後半からピッチに入った195センチのチュクブイキム・イクウェメシ(ナイジェリア)と激しいデュエルを披露。タイミングの良いジャンプで183センチの谷口が空中戦に勝ったり、彼らの厳しいボディチェックを受けたりしながら、冷静にゴール前を締めた。
「(ルーベンのアフリカ系FWは)強かったですね。自分の感覚で言ったら、あのふたりは今季のベルギーリーグで1位、2位を争うぐらいのフィジカル系のフォワードなので、楽しみにしてました。パワー勝負で負けないところと、駆け引きで上回るところはできた部分と、(ボールを)うまく収められた部分があったので、そのへんはもう少し自分の中でもこだわっていかないといけない」
持ち味のカバーリングの広さも光った。前がかりに戦うSTVVはちょっとしたパスミス、トラップミスから、一気にカウンターを食らうケースが多い。こうした味方のエラーにも最大の注意を払う谷口がピンチを未然に防いでいた。
「どんな場面であれ顔を出すことができる。そういうところが自分の持ち味のひとつだと思ってます。どこが危ないか、どこをやらせてはいけないか、そこを常に研ぎ澄ませて今日もやれました。チームとして危ないところをしっかり抑えていく。そこを個人でも察知しながら、ピンチを未然に防ぐ。そして局面で勝つということ。そういったことができていると思ってます」
1対0というスコアの割に、両チームとも多くのシュートを打った。守護神・小久保玲央ブライアンに「今日の試合は両チーム合わせて41本のシュートというスタッツです」と伝えると「おお!」と言って驚いた。
――STVVのシュートが21本、被シュートが20本です
「(ルーベンが)そんなに打ってたんですか? その中で自分は3本くらい(セーブしました)」
小久保が記録した3度のセーブのうち、2本がチームを救うビッグセーブだった。大王わさびスタイエン・スタディオンの夜空に「レーオ! レーオ!」のコールが響き渡る。
「もちろん(コールは)聞こえてます。やっぱり昨シーズンに比べて選手とサポーターの距離が近くなった。昨シーズン、残留したことで選手とサポーターの距離が近まったのかなと思います。自分の名前を言われるのは嬉しい。だけど、まずはチームのみんなが、サポーターのために走っている姿が大きいのかなと思います。今シーズンはプレーするのが楽しいです」
昨シーズンのSTVVは崖っぷちのところまで追い込まれながら、奇跡的に1部残留を果たした。修羅場をくぐり抜けたチームとサポーターとの間には新たな絆が育まれ、今季は開幕前から高い期待を集めていた。しかし、まさか21節を終えた時点でSTVVが2位に付けるとは、誰も予想してなかっただろう。
ルーベンの枠内シュートは3本(=小久保のセーブ数)。さらにバーを強襲したのが1本あった。多くのシュートが枠外に飛んでいったとは言え、STVVが全員、自陣ゴール前で身体を張って相手のシュートをブロックし続けたことも、小久保の攻守に繋がった。80分から守備固めとしてピッチに入り、83分にスライディングで相手シュートを防いだ畑大雅のプレーを引き合いに出し、小久保が語る。
「枠内に行くはずだったシュートはもっとあった。そこはみんながブロックして守ってくれた。大雅がああやってビッグセーブをしてくれましたし。
後半、ルーベンがふたり、デカいFWを入れてきたので、STVVはズルズル下がる形がありましたが、その中でみんなが競り合って、跳ね返して、そこから最後はこぼれ球を身体を出してでも行っていた。みんなが守ってくれているからこそ、自分にとっては明確なところにシュートが来る。昨シーズンは難しいシュートが飛んできましたが、今はみんなが(コースを)限定してくれているので、ある程度、止めるところは決まってくる。やりやすくプレーさせてもらってます」
昨季、2部降格の危機に見舞われたSTVVにとって、今季は“チャレンジャー”という立場だったはず。それが安定してプレーオフ1圏内の6位以内に居続けたことで、ライバルチームから”追われる立場”になった。しかし、昨年末の強豪チームとの連戦を好成績でくぐり抜けたことで勝点を42まで伸ばし、7位スタンダールとの差を15まで広げた。今、STVVはプレーオフ1進出を自力で決める、つまり“夢を叶える”というフェーズに入った。だが小久保はもっと上を見ている。
「“このチームで優勝したい”とみんな考えているので、やっぱり他のチームの順位とか気にしています。自分たちらしいサッカーをしたいんですが、相手チームのスカウティングをしっかりして、相手に合ったプレーをしてます。でも、やっぱりみんなが楽しんでサッカーしている。昨シーズンは絶対になかったことです」
――「優勝したい」と。つまりもうプレーオフ1を狙う段階は過ぎたわけですね?
「今日勝って、やっと(プレーオフ1を狙う段階が)過ぎたかなというところがある。21試合目ですから、さすがに強豪と言っても良いんじゃないでしょうか。しっかりクラブ・ブルージュにも勝ちましたし。ここからプレーオフ1に行った時に、ああいう強豪チームとの対決が待ってます。クラブ・ブルージュのホームゲーム、ユニオン・サン=ジロワーズのホームゲーム。彼らはホームで本当に強い。そこにどう俺らが合わせていけるかが重要。(レギュラーシーズンの)先はもう見ても良いのかなと思います」
チームの守護神としての地位を確立した小久保を、谷口主将はこう称える。
「今日もビッグセーブでチームを救ってくれました。彼もフィジカルコンディション的にはたぶん、万全ではないと思うが、今日もしっかりクリーンシートで役割を果たしてくれました。ゲームを重ねるに連れて頼もしくなっている。“後ろに最後は玲央がいる”というのは、このチームにとって大きくなってきていると思います」
首位ユニオンの得失点差は+25。3位クラブ・ブルージュは+13。しかしSTVVのそれはたった+8。強豪相手にも、下位チーム相手にも、STVVは僅差の勝利を積み重ねることによって、今季のサプライズを起こしている。あらためて思う。昨季の修羅場をくぐり抜けた彼らは本当にたくましくなった――と。
取材・文●中田 徹
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