今秋、愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会というビッグイベントを控えるテコンドー。その日本代表候補選考会を兼ねた「第19回全日本テコンドー選手権大会」が18日、愛知県の豊橋市総合体育館で開催された。
パラ・キョルギの部は、一般の全日本と同様に2分3ラウンド制で行われ、男子13人、女子2人がエントリー。2026年度強化指定選手、次世代育成選手選考会も兼ねていた。
新鋭もパイオニアも出場
男子80kg級は、日本におけるパラテコンドーのパイオニアとして知られる伊藤力が決勝で17歳の新鋭・重元夏に勝ち、小さくガッツポーズをして優勝の喜びを表した。
男子80kg級には4人が出場。伊藤(左から2人目)が重元(左)に勝利した互いに一試合を戦ったあとの決勝戦。重元は昨年12月にアジアユースパラ競技大会を経験したものの、全日本は大きな舞台。「緊張しすぎて足が重たくなっていた」という重元は、伊藤のカウンター攻撃を回避することができず、そのまま最後まで試合を立て直すことができなかった。「普通にやったらいい試合になっていたと思うが……僕のペースで試合ができた」と伊藤。「攻めにいけなかった」と反省しきりの重元に対し、伊藤は「この1年やってきたことをきちんと出せた」とほっとした表情で振り返った。
日本のパイオニアである伊藤(右)2016年に競技を始めて以降、(始めた当時の最軽量級である)61kg級から80㎏超級まで階級を行き来してきた伊藤は、今大会の直前で体重を少し増やして80kg以下級で出場。体重の調整は「もう慣れました」と話すが、減量や増量の苦労は想像に難くない。それでも勝てる階級にこだわったのは、アジアパラを視野に入れてのことだ。
「アジアパラの選考基準を確認して80kg級に出場を決めた。アジアパラは、僕のテコンドー生活の集大成になる。しっかり持って帰れるメダルを獲りたい」
競技人口が1人だった当初から目指してきたパラリンピック。その出場への道は叶わなかったが、2028年のロサンゼルスではなく、アジアパラで第一線を退く考えだという。
「もともとパリまでという気持ちだったが、アジアパラは日本で開催される。日本開催はめったにないこと。応援してくれる人や家族に国際大会で戦ってもらっているところを見てもらっておしまいにしたい。皆さんに、蹴り合うだけじゃないテコンドーを見せたいです」
アジアパラまであと9ヵ月、パイオニアは進化し続ける。
左前腕欠損の重元は、先を見据え「海外の試合で勝てるような選手になりたい」アジアパラメダリストの田中と工藤
男子58kg級は、パリ2024パラリンピック代表の田中光哉が優勝。初戦にあたる準決勝は、前足で相手を崩す得意のスタイルで、25歳の市川青空をけん制した後にポイント重ねて快勝。決勝は両腕欠損の阿渡健太に不戦勝となった。
パリ後、ケガがなかったこともあり、アジアパラに向けて仕上がっているという田中(右)「若手の成長は感じるが、抜かれるまでは僕も思い切って成長し続けたい。それがモチベーションのひとつになっている」と田中。
現在33歳だが、以前より練習量を増やし、ロサンゼルスに向けて順調にトレーニングを重ねている。テコンドー以外にも、パーソナルトレーニングに始まり、低酸素環境下でスタミナを強化したり、初動負荷トレーニングを取り入れたりするなど自身に刺激を入れている。
「若い選手が出てきてほしい」と話した工藤(右)ターゲットとするロサンゼルスの前には、アジアパラがある。
「(銀メダルを獲った)あの舞台がすごく楽しかった。アジアのレベルはどんどん上がっているが、もう一度決勝に残れるようにベストを尽くします」
男子70kg級は工藤俊介がKO勝ちで優勝。パラ・キョルギの最優秀選手賞に輝く強さを見せたが、「試合でやりたいことがあったので、自分としては複雑」と明かした。
アジアパラについては、「岐阜出身なので(開催地の名古屋は近く)ほぼ地元。応援してくださる方に金メダルで感謝の気持ちをお返ししたい」。この日も観客席から工藤へのエールが飛んでいたが、アジアパラでも盛り上げてほしい。
