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身寄りがなく、金もなく、誰にも看取られない…それでも遺体は火葬される…「孤独死」の埋葬を支える三つのセーフティーネット

身寄りがなく、金もなく、誰にも看取られない…それでも遺体は火葬される…「孤独死」の埋葬を支える三つのセーフティーネット

誰にも看取られずに亡くなり、発見が遅れた遺体はどうなるのか。30年以上現場に立つ葬儀人が語る「孤独死」の現実と、遺体を火葬へつなぐ国のセーフティーネットを追う。
 

新刊『火葬秘史 骨になるまで』(小学館)より一部抜粋・再構成してお届けする。

30年の葬儀人が語る『孤独死』の現場

個人化が進んだ社会で〝孤独〞に生活する高齢者が置かれた状況は、最も切実で放置できない問題であることを、国も国民も意識している。葬儀業歴が30年以上の大杉実生・中央セレモニー代表が「孤独死」のリアルな現場を語る。

「季節や環境によって異なりますが、放置された遺体はだいたい1週間ぐらいで白いうじが、2週間経つと黒い大きなうじがわきます。それ以上期間が経過すれば、特に夏場はさらに悲惨な状況です。

例えば、浴室で倒れて2か月が経過した方の場合、洗濯物の山だと思ったら遺体だったこともあった。ほぼ原形をとどめていない遺体を、猛烈な臭気の中、遺体袋に入れて運び出したことがあります。臭いが取れないため、畳やふすま、壁紙などすべて取り替えます。仕事とはいえ慣れることができません」

死をケガレとする「死穢」は、腐敗していく遺体への恐怖と嫌悪から生まれたものだった。それは日本の習俗や差別感情にも影響を与えたが、日本の行政孤独死問題が立ち上がる前から、すべての国民がどのような状況にあろうと、収容して火葬するセーフティーネットを用意している。

それは憲法第25条の《すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する》という条文に則ったもの。

最低限の葬儀を約束する三つのセーフティーネット

第一に用意されているのは「生活保護法」による保障である。同法は、困窮の程度によって必要な保護を行い、文化的で最低限度の生活を約束する。そのため生活保護を受けている人は、たとえ葬儀費用を準備できなかったとしても、遺体の運搬、火葬、納骨までに必要なものを「葬祭扶助」として受け取れる。

第二に「行旅病人及行旅死亡人取扱法」によって、行政が遺体を埋葬ないし火葬することが義務付けられている。「行旅」とは旅行中、移動中の人を指すが、この古めかしい言い方は、法律が1899年に施行されたものだからだ。

当時は病気や飢えなどさまざまな理由で行き倒れとなり、命を落とす人も少なくなかった。運転免許証など身分を記すもののない時代の身元不明者ゆえ、身体的特徴や着衣、所持品などを『官報』に記載の上で、行政が遺体を処理した。この官報記載は、実は今も変わらない。

第三は「墓地埋葬法」による処理である。第9条にこう記されている。《死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。規定により埋葬又は火葬を行ったときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法の規定を準用する》

生活保護を受けておらず、身元がわかっている人でも、葬儀を行うだけのおカネが残されていない場合には、市区町村長が埋葬等を行う。女優の島田陽子がまさにこのパターンだ。ただ、いずれも「遺体の処理」であり、人の尊厳に配慮したものではない。そこで凄惨な「孤独死」に至らないように、さまざまなサービスを提供する終活事業会社がある。

病院や賃貸住宅の入居保証、日常の買い物や介護やリハビリの世話、葬儀や墓の予約に至るまでサービスメニューは数多いが、玉石混淆で安心できるビジネスには育っていない。そこで政府は、孤独・孤立対策推進室が「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を作成するなど終活土壌を整えている。しかし高齢者の孤独・孤立支援はビジネスだけで割り切れものではない。必要とされるのは支援を必要とする人の気持ちを大切にする精神性だろう。

文/伊藤博敏

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