
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え、「照れて訳書けなかった?」「奥ゆかしい感じ」 コチラが小泉八雲が「世界一カワイイ女性」といった小泉セツさんです
松江市民も大喜びだった愛の言葉
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、1890年に来日し、『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え、「再話文学」の元ネタとなるさまざまな怪談を語った、妻・小泉セツさんがモデルの物語です。
第16週では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」から、英語を習い始めました。78話では夫婦で街を歩いていると、松江の人びとから英語をしゃべってみてほしいと頼まれてしまいます。
この場面でヘブンはトキに「You are the sweetest woman in the whole world」と言い、「(あなたは)セカイ イチバン カワイイ ジョセイデス」と訳しました。トキは「センキョー(thank you)」と返しながら、かなり照れています。
このセリフはモデルのラフカディオ・ハーンさんが、小泉セツさんに英語を教える際、実際に言った言葉でした。セツさんは自分なりに英語を勉強しようと、夫の言葉を聞き取ってメモしており、彼女の英単語帳は松江市の小泉八雲記念館で保管されています。
その単語帳には、最初の方に「ユオ・アーラ・デー・スエテーシタ・レトル・オメン・エン・デー・ホーラ・ワラーダ」と書かれていました。長文なので聞き取るのに苦労したようですが、ちゃんとした英語に直すと「You are the sweetest little woman in the whole world(あなたは世界で一番かわいい女性です)」となります。
「イ」を「エ」と発音するのは、出雲訛りの特徴です。またハーンさんは、女性をほめる際に「sweet」「little」という言葉をよく使っていたといいます。
ちなみに、セツさんは「ペーポリ(paper) 紙」「ブレード(bread) パン」という風に、聞き取った単語の後に日本語の意味を書いていたのですが、前述のハーンさんからの愛の言葉には訳の記述がありませんでした。トキのように照れて、書けなかったのかもしれません。
セツさんは英語の習得には至りませんでしたが、夫婦は「ヘルンさん言葉」と呼ばれる、動詞、形容詞の活用、助詞を省き、日本語の単語を英語の順番のように並べて話す独自言語で会話するようになりました。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)
