滑りに違いが⁉ ストックがおよぼす滑りへの影響

ストックワークは、滑りのテンポや重心の流れに密接に関わる。突く位置、角度、タイミングがわずかに違うだけで、ターンのつながりや上体の前後バランスなどが変化する。ストックをどう使うかで、滑りの印象そのものが変わっていくのだ。
リズムを刻む役割としてのストックは、小回りやコブでその違いが顕著に表れる。徳竹選手は「大回りではそれほどの影響はないが、小回りやコブでは前後のすばやい動きがリズムに影響する」という。一定のテンポでストックを突けるかどうかが、ターンの安定を決定づけ、リズムが整うことで上体のブレ軽減にもつながる。
奥村選手は、ターン後半から次のターン前半にかけてリングを前に出す意識を持ち、ターンの流れ構築にストックを生かしている。手首を柔らかく使うことで、上体の動きを滑らかに保つようにしているようだ。コブではリングを真っ直ぐ出すか、少し回して出すかでテンポが大きく変化するため、シチュエーションによっての使い分けも重要となる。滑りのテンポを作る感覚が、安定感を生み出す。
大場選手が注目するのは、上半身と下半身の連動。「ヒジの動きはヒザ、手首の動きは足首と連動している」という考え方で、ストックの構え方次第でポジションが変化すると指摘する。強く握りすぎれば動きが詰まり、自然な体の反応が鈍くなるため、 必要なときに必要なスピードで突くことが、理想的なフォームへつながる。
栗山選手は雪質やスピードによって、リングの大きさやグリップの形状を調整している。突く位置がずれると体が浮いたり、ターン中に後傾になってしまうため、自分のターンリズムに合った設定が欠かせない。正確なストックワークが、ターンコントロールの精度を高めるのだ。
ストックの動きが変われば、ターンのリズム、重心の運び方、フォームすべてに影響を及ぼすことがわかった。突く速さや角度、適度な力の抜き方が滑りに影響を与えるようだ。必要なのは正確に機械のようにストックを突く技術よりも、流れの中で自然に扱えるかどうかがレベルアップのカギとなる。
突くタイミングって? トップスキーヤーが考えるベストなストックワーク

滑りのテンポと重心の動きを決定づけるのが、ストックを突くタイミングだ。エッジングや切り替えの瞬間にどのように突くかで、ターンの質や安定感が変化する。タイミングがずれてしまえば、ターンの流れは途切れてしまう。では、正しいタイミングはいつなのだろうか。
大場選手は「ストックは強く握らず、荷重の瞬間に軽く握る」スタイル。スキーのトップの延長線上にリングが出てくる感覚を理想としている。手首の動きで自然に前へ出るストックが、ターンの流れを作り出す。「動くスキーの上で“今なら動ける”と思った瞬間にストックを突く」ことを大事にしている。意識的に突くのではなく、動作の流れに合わせることも大切だ。
切り替え時にストックをどう使うかも重要なポイントだ。水落選手は「切り替えの前に手首を使いリングを前に出してからストックを突く」と語る。強く突かず、縦方向に軽く振るようなイメージをもつことで、ターン中の動きが止まらずスムーズに重心が移動する。
青木選手は指の使い方に着目。「人差し指側で握ると前傾を保ちやすく、小指側で握ると後傾に対応しやすい」と、ターンサイズや滑るシチュエーションに応じてストックの握り方を変え、ポジションを変化させている。
ストックを突くタイミングがわからない初心者に対しては「タイミングがわからない場合は、無理にストックを突かず、ターンが安定してから切り替えのタイミングで軽く突くといいですね」とアドバイスを贈る。
また、ストックを突くタイミングの取り方を感覚で覚える方法として、栗山選手は「切り替え時に手を叩いてリズムを覚える練習」をおすすめしている。手を叩くリズムをストックワークに置き換えることで、ポジションの入れ替えが自然になり、滑りのぎこちなさが消える。滑り全体のスムーズさを維持するために、体の動きに寄り添うようなストックの使い方を意識できるのだ。
一方、敢えて不安定な瞬間にストックを突くイメージをもっている穴田選手。重心の支持基底面(体を支えるために床と接している部分によって囲まれる面積)を広げる目的があり、外足から内足に切り替わる直前にリングを回しながら突き、より上体を安定させた上で、次のターンへと入っていくイメージをもっている。「リングの先を意識するとタイミングが取りやすく、突くタイミングの感覚も重要」だと語る。
ストックを突く瞬間は、動きが止まるようなイメージをもちがちだが、正しいストックワークを身につけることで、滑りは安定し連続したスムーズなターンが可能となる。切り替えのタイミングで、重心の移動とともに流れの中でストックを突くためには、ストックの先を意識したり、腕、指といった部分の使い方も重要になってくる。
