運動模倣薬への長い道のりと、今回の一歩

今回の研究により、古くからのど飴などに使われる殺菌成分4HRが、糖尿病ラットの筋肉で、糖の取り込みと筋肉の状態を改善する可能性が示されました。
また分析により4HRを与えることで、運動したときに使われる回路の一部をまねできる可能性があることもわかりました。
ただ「4HRが含まれているのど飴を大量にとれば糖尿病が治る」というわけではありません。
今回の研究結果はマウスの細胞やラットを使ったものであり、人間でも同じような改善が起こるかは不明であり、長期間にわたり高容量の4HRを摂取することの安全性も不明です。
(※医師の指導なしに勝手に4HRの入っているトローチなどを服用しないでください。)
それでも、この研究には大きな価値があります。
運動がしたくてもできない人たち──たとえば、高齢で関節に負担がある人や、重い糖尿病で極端に疲れやすい人──のために、「筋肉の中の燃料スイッチ」を薬で少しだけ押してあげるという発想は、今後の治療開発のヒントになります。
この4HRだけが正解かどうかは分かりませんが、筋肉細胞の燃料メーター(AMPK)と「糖のドア(GLUT4)」を狙い撃ちにする方法が、一つの有望な方向として浮かび上がったと言えるでしょう。
もしかしたら未来の世界では、「今日は運動できなかったから、せめて筋肉に優しい分子を足しておこう」という発想が当たり前になっているかもしれません。
元論文
4-Hexylresorcinol Enhances Skeletal Muscle Glucose Handling through the AMPK-GLUT4 axis in Diabetic Rats
https://doi.org/10.64898/2026.01.19.700277
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

