高校生の探究が、世界とつながった瞬間

今回の取り組みの出発点となったのは、岡山県立矢掛高校で行われている探究学習「やかげ学」でした。
矢掛高校では、地域課題と向き合う学びを通して、「考えるだけで終わらせない探究」を継続的に行っています。
生徒たちが以前から取り組んできたのが、使われなくなった制服を再利用する制服リサイクル活動です。
環境への配慮という観点から始まったこの活動は、当初は校内や地域に向けた取り組みでした。
転機となったのが、なかよし学園プロジェクトによる「世界とつながる学び」の講演会です。
講演を通して、生徒たちは戦争や難民問題を「遠い出来事」ではなく、今も続く現実として捉え直しました。
その中で、「今の自分たちにできることは何か」を考え始めます。
大きな支援や特別な技術がなくても、自分たちの身近にあるもので誰かを応援できないか。
その問いの延長線上に生まれたのが、制服をリメイクしたシュシュでした。
使われなくなった制服の生地を裁断し、一つひとつ手作業で制作されたシュシュには、「おしゃれを楽しめない人の力になりたい」という思いが込められています。

このシュシュは、見た目のかわいらしさだけを目的にしたものではありません。
制服という、日本の高校生にとっての日常を象徴する素材を使うことで、「遠く離れた誰かの日常とつながる」ことを意識したものでした。
環境活動として始まった取り組みが、国際協力や平和教育へと広がっていく。
矢掛高校の探究学習は、地域で培ってきた姿勢をそのまま世界へとつなげています。
自分たちの行動が誰かの生活に届くという実感は、生徒たちにとって大きな学びとなりました。
講演会で終わらせない。「行動」までつなぐ学びの設計

今回の取り組みを語るうえで欠かせないのが、矢掛高校で行われた「世界とつながる学び」の講演会です。
この講演会は、話を聞いて終わる場ではなく、「その先の行動」を前提に設計されていました。
講演の中で生徒たちに投げかけられたのは、
「もし、あなたが難民キャンプに教材を届けるとしたら、何を届けますか?」
という問いです。
特別な知識や技術がなくても、今の自分にできることは何か。
生徒たちは自分たちの立場や身の回りの環境を振り返りながら考えました。
この問いかけが、探究を「考える学び」から「動く学び」へと切り替えるきっかけになりました。
多くの講演会が「知る」「感じる」で終わってしまう中で、今回の学びが特徴的だったのは、
講演がゴールではなく、次の行動へのスタートとして位置づけられていた点です。
話を聞いたあとに何をするのかまでが、学びとして設計されていました。
生徒たちからは、
「世界の出来事が身近に感じられた」
「自分にも関われる方法があると知った」
といった声が上がっています。
制服リメイクという発想も、こうした流れの中から生まれました。
身の回りにある素材を使い、今の自分たちにできる形で誰かを応援する。
そのプロセス自体が教材となり、学びとして積み重なっていきます。 このように、講演会は一方的に知識を伝える場ではなく、
生徒一人ひとりが「自分事」として考え、行動に移すための起点として機能しました。
学びが教室の中で完結せず、実際の社会や世界とつながっていく。
その実感があったからこそ、生徒たちの探究は形として残ったのです。
