
動画配信サービスでドラマやアニメを次々と視聴する「一気見」は、今や珍しい行動ではありません。
週末にまとめて見る人も多いでしょう。
しかし中国・黄山大学(Huangshan University)の研究で、こうした一気見の中でも「依存的な一気見」に該当する人は、強い孤独感を抱えやすいことが明らかになりました。
単なる娯楽としての一気見と、問題を伴う一気見の間には、はっきりとした違いがあるようです。
研究の詳細は2026年1月21日付で科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されています。
目次
- 孤独と結びつくのは「一気見」ではなく「依存的な一気見」
- 孤独な人が一気見に向かう2つの心理ルート
孤独と結びつくのは「一気見」ではなく「依存的な一気見」
研究者たちは今回、日常的にテレビシリーズを長時間視聴している成人551人を対象に調査を実施しました。
参加者はいずれも、1日あたり3.5時間以上、週に4話以上を視聴する「ヘビーユーザー」でした。
研究の重要なポイントは、一気見を一括りにせず、「依存的な一気見」と「非問題的な一気見」に分けて分析した点にあります。
「非問題的な一気見」とは、「自分でやめ時を決められる」「生活への支障がない」「純粋な楽しみとして見ている」「心理的な問題と強く結びついていない」ことを特徴とします。
一方で、「依存的な一気見」とは、「やめたくてもやめられない」「日常生活に悪影響が出る」「感情調整の手段になっている」などを特徴とします。
その結果、全体の約6割が「一気見依存」の基準を満たしていました。
分析の結果、孤独感と強く関連していたのは、依存的な一気見をしている人たちだけでした。
一方で、同じように長時間視聴していても、依存の基準を満たさない人では、孤独感との明確な関連は確認されませんでした。
つまり、問題は「どれだけ見るか」ではなく、「どのような心理状態で見ているか」にあることが示唆されたのです。
孤独な人が一気見に向かう2つの心理ルート
では、なぜ孤独感は依存的な一気見と結びつくのでしょうか。
研究者たちは、一気見の動機に注目しました。
その結果、孤独感が強い人ほど、「現実から逃れるため」と「気分を良くするため」という2つの動機が強いことが分かりました。
一つは、つらい現実や否定的な感情を忘れるための「逃避」としての一気見です。
もう一つは、物語の世界に没入することで、楽しさや高揚感を得ようとする「感情の補充」としての一気見です。
研究では、これら2つの動機が、孤独感と一気見依存をつなぐ重要な役割を果たしていることが示されました。
この点は重要です。
一気見依存は、単に気分が落ち込んでいるから起こるのではなく、「嫌な気持ちから逃げたい」という側面と、「良い気分を得たい」という側面の両方が同時に働いている可能性を示しているからです。
一気見は悪者ではないが、心のサインには注意
この研究は「一気見そのものが悪い」と結論づけているわけではありません。
多くの人にとって、一気見は日常的な娯楽であり、孤独感と必ずしも結びつくものではありません。
しかし、もし一気見が生活に支障をきたし、やめたくてもやめられない状態になっている場合、それは孤独感や感情調整の難しさが背景にあるサインかもしれません。
コンテンツを楽しむ時間が、知らず知らずのうちに心の穴埋めになっていないか。私たち自身の視聴習慣を、あらためて見直すきっかけになりそうです。
参考文献
People with ‘binge-watching addiction’ are more likely to be lonely, study finds
https://medicalxpress.com/news/2026-01-people-binge-addiction-lonely.html
元論文
Binge-watching addiction as an emotion regulation way of coping loneliness
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0329853
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

