
自宅の庭やベランダで植物に触れる時間が、心と体の健康に良い影響を与えているかもしれません。
シンガポール国立大学(NUS)の最新研究により、毎日ガーデニングを行う人ほど、不安が少なく、身体的な制限も少ない傾向があることが明らかになりました。
特別な運動や治療ではなく、日常の延長にある「園芸」が、健康的な加齢を支える可能性が示されたのです。
研究の詳細は2025年7月1日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。
目次
- 毎日ガーデニングをする人ほど「不健康」になりにくい
- なぜガーデニングは心と体に良いのか
毎日ガーデニングをする人ほど「不健康」になりにくい
この研究は、シンガポール北東部のセンカン地区に住む30歳から98歳までの地域住民を対象に行われました。
研究チームは、日常的なガーデニングの頻度と健康状態の関係を調べるため、約400人に対して訪問調査を実施しています。
健康状態は2つの側面から評価されました。
1つは「数ブロック歩く」「買い物袋を運ぶ」といった日常動作に制限があるかどうかという身体的健康。
もう1つは、不安の程度を測る心理尺度を用いた精神的健康です。
その結果、毎日ガーデニングを行っている人は、園芸をしない、あるいは時々しかしない人に比べて、「不安や身体的制限がある状態」になる確率が43%低いことが分かりました。
この関連は、年齢や性別、慢性疾患の有無、喫煙・飲酒習慣、学歴、収入などを統計的に調整した後も維持されていました。
単に「不安が少ない」「身体が動きやすい」という個別の項目では統計的に明確な差が出なかったものの、それらを合わせた「全体としての健康状態」では、毎日のガーデニング習慣がより良好な状態と関連していた点が特徴です。
なぜガーデニングは心と体に良いのか
調査では、ガーデニングを行う理由として最も多く挙げられたのが「幸福感・満足感」、次いで「リラックスできるから」でした。
一方、行わない理由として多かったのは「時間が足りない」「興味がない」でした。
ガーデニングには、土を掘る、植物を植える、水やりや剪定を行うといった身体活動が含まれます。
これらは激しい運動ではありませんが、中等度の運動を継続的に行うことに相当します。
また、屋外で行う場合には日光を浴びる機会が増え、体内時計の調整やビタミンDの生成を助ける可能性もあります。
心理的な面では、植物の成長を見守る過程そのものが注意を現在に向けさせ、日常の悩みから意識を離す効果を持つと考えられます。
達成感や「育てている」という感覚が、気分の安定や情緒的な満足感につながる点も重要です。
地域の共同菜園のような形で行えば、人との交流が生まれ、孤独感の軽減にも寄与する可能性があります。
健康効果を過信せず、日常習慣として考える
研究者らは、今回の結果について「毎日のガーデニングが、不安や身体的制限の少なさと関連しており、健康的な高齢化を支える活動の一つになり得る」と結論づけています。
一方で、この研究は一時点の調査に基づくものであり、ガーデニングが健康を改善したと確実に断定できるわけではありません。
もともと心身が比較的健康な人ほど、日常的にガーデニングを続けやすい可能性もあります。
それでも、特別な道具や高い運動能力を必要とせず、日常生活に自然に組み込める点は、ガーデニングの大きな魅力です。
心と体の健康を支える「静かな習慣」として、改めて注目する価値はありそうです。
参考文献
New research connects daily gardening habits with reduced anxiety and physical limitations
https://www.psypost.org/new-research-connects-daily-gardening-habits-with-reduced-anxiety-and-physical-limitations/
元論文
The association of daily gardening and healthy ageing in Singapore
https://doi.org/10.1038/s41598-025-03392-y
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

