「最悪な判決。これで終わるという選択肢は、私の中にはありません!」
判決後の記者会見で、弟(当時50歳)を事故で亡くした姉は、無念の表情で唇を噛みしめた。
福岡高裁で1月22日に下された、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)罪に問われた被告の男(当時19歳)への控訴審判決。なんと平塚浩司裁判長が言い渡したのは、一審の「危険運転」を覆した「過失運転」の適用と、わずか懲役4年6カ月という衝撃の「減刑」だったのである。
被告は2021年2月、大分県大分市大在の県道で、時速194キロを出して車を運転。交差点を右折中だった対向車に衝突し、運転していた男性は死亡した。大分地裁による2024年11月の一審では「制御困難な高速度」が認定され、被告には懲役8年の裁判員裁判判決が言い渡されていた。
しかし二審で裁判官が強調したのは、驚くべきロジックだった。法曹関係者が憤激する。
「被告の車が車線を逸脱せず直進していたから制御困難ではない、というんですからね。常識的に考えて、法定速度が時速60キロの一般道を200キロ近くで爆走する車が迫る街角で、いったいどこの誰なら安全に右折することができるのか、ということです。右折車から見れば、それは対向車などではなく、まさに回避不能なミサイルでしかない。一審ではプロドライバーが『現場をミスなく走るのは至難』と証言しましたが、高裁はこれを『車両が違うから証拠価値に乏しい』と斬り捨てている。現場を知る専門家の感覚よりも、書面と理論上の具体的性能を優先する。この現場感覚の欠如こそが、このような驚愕の減刑を導き出す要因になってしまったことが残念でなりませんね」
今回、高裁判決の鍵となったのは「車線から逸脱せず直進できていた」という点だが、皮肉にも被告が乗っていた車は走行性能が高く、194キロを出しても車体がふらつかなかったことが「制御不能ではなかった」という判断材料にされている。
「それなら逆に、ボロボロの軽トラックで時速100キロを出してふらつけば、危険運転になるのか。つまり今回の判決では『ボロい軽トラなら危険運転、高級スポーツカーなら過失』という、マシンのスペックによる不平等が司法で認められてしまったことになります。『ふらつかずに真っ直ぐならOK』というこの免罪符が、スピードとスリルを求める若者たちにどんな悪影響を及ぼすことになるのか、懸念の声が広がっています」(前出・法曹関係者)
客観的事実に基づく理論は重要だろう。しかし庶民の常識を置き去りにしているとしか思えない日本の司法の在り方こそが、もはや制御不能な速度で暴走しているように見えるのだが…。
(灯倫太郎)

