VRデバイスを持っている筆者はどう感じたか?
筆者も、家にはVision ProやMeta Quest 3があるので、「別に出掛けていって、お金を払ってVRを見なくても……」と思っていたのだが、空間内で移動できるフリーローミングVRは新鮮。自分が歩いて、見回す動きと、目に見える映し出される光景が完全にシンクロするので、異空間を歩いている感覚に没頭できる。
なにより、異空間の中でフィジカルに歩けるというのが新鮮な感覚だ。
筆者はVR酔いしやすい方なので、VRデバイスを着けてVR空間内で仮想の移動(コントローラを使っての移動)をすると、目に見えている光景の移動と、三半規管の感じる移動が違って酔いがちなのだが、フリーローミングVRは、見ている光景と三半規管の感じる移動が一致するので酔わないというのもありがたい。
コンテンツ中にエレベータのシーンがあるのだが、そのシーンだけは光景と三半規管の違和感があって、少し酔う感じはした。
美術品をVRデバイスで見ることに、新しい価値を見出せるか?
もともと、筆者は『美術品は実物を見たいので、VRで観賞する必要はない』と思っていた。なにしろ、プラド美術館も現地で2〜3日かけて観賞したことがあし、美術館・博物館を見るのは好きなので、ルーブル、オルセー、大英博物館、メトロポリタン美術館、グッゲンハイム、NY MoMA、ウフィツィ、アムステルダム国立美術館……など、世界の名だたる美術館に足を運んでいるので『いまさら、解像度の低いVRで見てもなぁ……』という気持ちはあった。
しかし、これはまったく別物のエンターテイメントとして楽しかった。
現地で絵を見ても、筆者は(見るのは好きだが)さほど美術史や作品解釈などに詳しくはないので、「なるほど、こういう絵か」と思うだけなのだが、『Art Masters:プラド美術館所蔵品VR展』は、作品解釈に踏み込んでVR展開されているので、なまじ現物を見るより深く作品の本質を説明してもらっている感じはした。
特にヒエロニムス・ボスの『快楽の園』は圧巻だった。
フリーローミングVR体験自体はすごく面白いし、プラド美術館公認のコンテンツというだけのことはあって、作品の本質に迫るエンターテイメントだと思う。数百年の時を超えて、元の絵の作者に体験してもらいたいと思った。