
アニメ『葬送のフリーレン』1期の場面カットより (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
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魔導書収集の旅が生む心温かいつながり
アニメ『葬送のフリーレン』を通じて描かれる、魔法使い「フリーレン」の旅の目的のひとつに「魔法の収集」があります。彼女が集めているのは、一見すると「何の役にも経たない」と言われるような、取るに足らない魔法ばかりです。そんな魔法を集める彼女の旅路は、非効率で無駄が多いものばかりに見えます。しかし、そうやって集められた魔法の数々が、人びとの心を深く感動させる物語へと私たちを導いてくれるのです。
英雄とのつながりを生んだ「花畑を出す魔法」
フリーレンの魔法のコレクションのなかで、最も象徴的であり物語の核となるのが「花畑を出す魔法」です。これは彼女の師匠である大魔法使い「フランメ」が「一番好きな魔法」として遺したものであり、フリーレンが勇者「ヒンメル」と出会うきっかけとなった魔法でもありました。
幼い頃、森で迷子になったヒンメルに、フリーレンは気まぐれでこの魔法を見せます。彼はその光景に目を奪われ、生まれて初めて魔法をキレイなものだと感じました。この魔法とフリーレンとの出会いがあったことで、その後ヒンメルはフリーレンを再び見つけ、世界の脅威である魔王を倒す旅に出るのです。
そして時が経ち、ヒンメルが世を去って数十年後、フリーレンは彼が世界の各地に遺した勇者ヒンメルの銅像の前に立ちます。そこで彼女は、村人から「蒼月草(そうげつそう)」という花について聞きます。その花はかつてヒンメルが愛した故郷に咲いている青い花であり、生前、彼から「いつか君にも見せてあげたい」と言われていたものでした。
「花畑を出す魔法」は、見たことのある花しか再現できません。蒼月草を見たことがないフリーレンは、紆余曲折を経てその花を見つけ出し、ヒンメルの銅像に咲かせます。一面に広がる青い花弁を通して、やっと彼女はヒンメルとの約束を果たしたのです。
勇者との温かな絆を再発見した「失くした装飾品を探す魔法」
もうひとつ、フリーレンが使う魔法で多くの人びとが涙したのが、「失くした装飾品を探す魔法」です。道中、魔物に襲われたフリーレンは、そのなかでヒンメルからもらった指輪をなくしてしまいます。その指輪に施されていたのは、「鏡蓮華(かがみれんげ)」の意匠です。森のなかに消えた指輪を見つけるのは至難の業で、フリーレンも諦めかけたとき、行商人からこの魔法について書かれた魔導書を譲り受けます。
おかげで、フリーレンは無事に指輪を見つけることができました。この鏡蓮華には、「久遠の愛情」という花言葉があります。そのことにそれほど興味を示さない彼女でしたが、回想シーンではヒンメルが彼女の前にひざまずき、指輪を贈るというプロポーズのような渡し方だったことが明らかとなりました。
エルフであるフリーレンの長い寿命を理解したうえで、一瞬の感情ではなく「永遠の愛」を誓うかのように指輪を渡すヒンメルの姿に、多くの視聴者が胸を打たれました。
これ以外にも、数々の「一見くだらないけれど愛すべき魔法」が本作にはいくつも登場します。例えば、フリーレンが披露した「甘い葡萄を酸っぱい葡萄に変える魔法」は、ドワーフの戦士アイゼンの好物が「酸っぱい葡萄」であることを知ると、彼女の不器用な優しさを感じます。
ヒンメルは生前、「僕はね、終わった後にくだらなかったって笑い飛ばせるような楽しい旅がしたいんだ」と語っていました。彼女がヒンメルと出会う以前から続けている魔法探しは、まさにそんな「くだらないと笑い飛ばせる旅」を体現しているように感じませんか?
