■スター女優たちが共演し女性たちの連帯で魅せる『密輸 1970』

幼いころから苦楽を共にしてきた女性たちが、自分たちを搾取してきたボスの隠し資金を奪おうとする『PROJECT Y』を観て最初に思いだすのは、1970年代を舞台にした『密輸 1970』(23)。架空の港町に集まったクセのある人物たちが、海底に沈められた密輸品を巡って軽快な駆け引きを繰り広げるこの映画では、男性たちの下で働いていた海女たちの協力が見どころ。

船長の娘ジンスクに『人生は、美しい』(22)のヨム・ジョンア、よそ者であるために周囲から不審の目で見られるチュンジャに1990年代からのトップスター、キム・ヘスが扮し、絶妙なコンビネーションを披露している。華やかな2人が着こなすカラフルな衣装にも注目だ。彼女たちを意外な形でサポートするカフェの主人オップン役のコ・ミンシの見せるコミカルな演技も楽しい。監督は「ベテラン」シリーズのリュ・スンワン。2002年に女性バディが活躍する『血も涙もなく』を撮ったことのある彼が、約20年ぶりに手掛けた女性中心の作品ということでも注目を集めた。
■過酷な環境で生き抜くスター女優と新人女優「エマ」

官能的な内容で1980年代に一世を風靡した映画『エマ(愛麻)夫人』をモチーフに、女性たちが過酷な環境で撮影に臨んでいた映画界の裏側を描いたドラマ「エマ」。こちらではトップ女優として活躍するチョン・ヒランと新たに発掘されたシン・ジュエが世代を超えた共闘を見せる。圧倒的な力を持つプロデューサーから疎まれ助演を務めることになったヒランは、当初はジュエを見下しているが、男たちの思惑を知りながらも強い意思を持って映画界でのしあがろうとする彼女をいつしか認めていく。

『エクストリーム・ジョブ』(19)のイ・ハニが、ゴージャスな雰囲気をまとったヒランを貫禄たっぷりに演じている。『エクストリーム・ジョブ』で名コンビぶりを見せたチン・ソンギュが彼女と対立するプロデューサー役というのもおもしろい。ジュエ役は、自身もオーディションを経て役をつかんだパン・ヒョリン。さらに、初監督作『君と私』(24)が日本でも公開されたチョ・ヒョンチョルが、作品と俳優たちを守ろうと奮闘する監督役で登場する。
■女子高生2人が復讐を目指し修学旅行へ『地獄でも大丈夫』

『エマ』で新人女優を演じたパン・ヒョリンが、自分をいじめた相手に復讐しようとする女子高生に扮した『地獄でも大丈夫』(23)。高校生の校内暴力という題材から出発し意外な方向へと進んでいくストーリーと、リアルで瑞々しいキャラクターたちが魅力的な作品だ。

口では立派なことを言いながらも、いざとなると臆病になるナミ(オ・ウリ)と、口数が少なく、ナミの行動に振り回されているように見えながら芯は強いソヌ(パン・ヒョリン)。ひょんなことから天敵チェリン(チョン・イジュ)が所属する宗教団体の施設で数日を共にすることになるが、自分たちをいじめていたチェリンは別人のようで、2人に心から謝罪したいと訴える。学校の中ではヒエラルキーの頂点にいた彼女が、自分たち以上に追い詰められた状況にあると気づいていくナミとソヌ。地獄のようないまをなんとか生き抜いていこうとする彼女たちの姿が愛おしい。
■天才vsエリートが、高みを目指し切磋琢磨「ジョンニョン:スター誕生」

ライバルとして凌ぎを削る女性たちの関係が輝くのは、1950年代から1960年代にかけて隆盛を極めた女性だけの歌劇団を舞台にしたドラマ「ジョンニョン:スター誕生」。デビュー作『お嬢さん』(16)でも、女性同士の関係を魅力的に見せたキム・テリが主人公のジョンニョンに扮しトレーニングを重ねて見事な歌声を披露。

また、「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」で主人公に暴力を振るう一団のリーダーを演じたシン・イェウンが、ジョンニョンの才能に脅威を覚えるエリート舞台人に。そしてチョン・ウンチェが演じた一座のトップ男役の麗しい舞台姿も大きな話題を呼んだ。
■元機動隊のベテラン刑事と熱血若手刑事が女子高生のため奮闘!『ガール・コップス』

プロフェッショナルな女性たちの活躍を描く『ガール・コップス』(19)では、敏腕刑事として活躍していたものの、結婚、出産後は相談窓口勤務となってしまった40代の警官ミヨンと、彼女の義妹にあたる20代刑事ジヘが、デジタル性犯罪に巻き込まれてしまった女子大生のために協力して捜査にあたる。

ドラマ「恋のスケッチ〜応答せよ1988~」など、“母親役”の印象が強かったラ・ミランが、(母親であると同時に)有能な刑事役を好演。今作の成功以降、「正直政治家 チュ・サンスク」シリーズ、『市民捜査官ドッキ』(24)と、主演作が続いている。ジヘ役のイ・ソンギョンが見せるダイナミックなアクションも爽快だ。彼女たちをサポートするチャンミを演じた少女時代のスヨンは、その後、母と娘が主人公という異色のラブコメディドラマ「ラブ・パッセンジャー ~私たちの恋愛事情~」にも出演している。
■正反対の理念を持つ2人の弁護士が共にトラブルに立ち向かう「グッド・パートナー〜離婚のお悩み解決します〜」

巨大法律事務所の離婚担当部署を舞台にしたドラマ「グッド・パートナー〜離婚のお悩み解決します〜」では、ベテラン弁護士チャ・ウンギョンと新人弁護士ハン・ユリが、ぶつかり合いながら少しずつ互いを理解し、かけがえのない“グッド・パートナー”となっていく姿が描かれた。

現職の離婚弁護士が手掛けたリアルな離婚事情を見せるだけでなく、夫と離婚するウンギョン、両親が離婚した家庭で育ったユリと、それぞれが「当事者」として離婚に関わっているという点も興味深い。すべてが完璧で自信満々のウンギョンを落ち着いた演技で見せたチャン・ナラはSBS演技大賞を受賞。三姉妹の奮闘を描くドラマ「シスターズ」でも好演したナム・ジヒョンが、先輩の教えを受けながら成長していくユリに扮している。
■2人だけで生きてきた女性2人の命を懸けた復讐劇『PROJECT Y』

信頼できる大人が一人もいない環境のなかで、お互いだけを頼りに生きてきた女性ドギョンとミソンが主人公の『PROJECT Y』。夜の街で働きながら金を貯め、新しい人生を始める日を心待ちにしていた彼女たちだが、ある日、不動産詐欺により、ミソンが大切にしてきた金を奪われてしまう。その背後に、新たにやってきたボスの存在があることを知ったドギョンはミソンとの未来のため、彼の隠し資金を奪おうとする。

欲望と暴力がうごめく街で生き抜いてきたタフな人物で、凄腕のドライバーでもあるドギョン。演じているのは世界的に知られる名匠イ・チャンドン監督の『バーニング 劇場版』(18)でデビューして以降、予測不可能で爆発的な感情表現で数々の作品に主演してきたチョン・ジョンソ。一方、危険を承知で男たちの欲望を利用して金を稼ぐミソン役を『わかっていても』(21)などで知られるハン・ソヒが演じている。
一見、まったくタイプの違う2人だが、実生活でも仲がよいということで、女性2人の唯一無二の関係を自然に見せている。果たして、彼女たちは、自分たちが望む未来を手にすることができるのだろうか――。
文/佐藤結
