手軽で安価に食べられる牛丼は、忙しいお昼時や夜食に食べる人も多いだろう。しかし、カロリーや栄養バランスが気になる部分も…。糖化研究の第一人者、八木雅之氏が吉野家と共同研究し、牛丼と血糖値の上昇を細かく分析した。
八木雅之氏の書籍『老けない食べ方の新常識』(三笠書房)より一部を抜粋・再構成し、牛丼の老けない食べ方を解説する。
「吉野家さん」と共同で行なった研究成果
安くて、おいしくて、手軽に食べられて、満足感が大きい。けれども、「健康によくなさそう」と思われがちな料理。牛丼は、その代表格でしょう。
でも、牛丼が健康によくないというのは事実でしょうか。私たちは牛丼チェーンの吉野家さんと共同研究を行ないました。被験者は20代の健康な男女19名。結果は、
□白ご飯のみ(200g) → 血糖値の上昇は約75mg/dL
□白ご飯(200g)+牛丼の具(125g) → 血糖値の上昇は約60mg/dL
この実験では、どちらも白ご飯の量を同じにしています。牛丼には煮だれや玉ねぎが加わるため、糖質量は牛丼のほうが多くなります。それでも、牛丼を食べたときのほうが血糖値の上がり幅が約15mg/dLも抑えられました。しかも、血糖値が速やかに下がっていったのです。「高血糖の時間帯が短い」ということは、その分、アルデヒドの発生量も抑えられるということです。
では、牛丼の具の「何」に血糖値を抑える効果があるのでしょうか。
それを調べるため、「牛肉(65g)」「煮だれ(汁)(35g)」「煮た玉ネギ(25g)」を白ご飯(200g)にかけたものを食べ、血糖値の変化を調べました。
結果は、「煮だれ+白ご飯」「煮た玉ネギ+白ご飯」は、「白ご飯のみ」と、血糖値変化曲線はほぼ同じでした。
一方、「牛肉+白ご飯」の場合は、血糖値の上昇が約43/dLにとどまりました。白ご飯のみのケースでは血糖値が約75/dLまで上昇しています。牛肉によって、血糖値の上がり幅は32/dLも抑えられることになります。つまり、牛肉に含まれるタンパク質や脂質が糖の吸収をゆるやかにしたと考えられるのです。
牛丼だけではなくバランスが大事
もちろん、大盛を選べば摂取する糖質量も増え、食後高血糖が起こりやすくなります。しかし、一人前を食べている分には、白ご飯だけより牛丼のほうが血糖値の上昇を抑えられ、肥満や老化の予防にはよいとわかったのです。
この研究を中心になって行なったのは、私たちの研究室の女子学生でした。ある日、彼女が「牛丼ではないメニューで実験したい」と言い出しました。
「それならば、『熱量(kcal)』『タンパク質(g)』『脂質(g)』『炭水化物(g)』『食物繊維(g)』をすべて、牛丼と同じに整えたメニューをつくって、試験してごらん」と、私はアドバイスしました。
彼女は、白ご飯(200g)にウインナーソーセージ(3本)、スクランブルエッグ、マッシュポテトという自分で考案した朝食メニューで、試験を行ないました。
すると、血糖値変化曲線は、なんと牛丼とほぼ同じ変動を示したのです。
この結果から明らかになったことがあります。
アルデヒドスパークを抑えるために重要なのは「栄養バランス」であり、「このメニューや食材でなければならない」という区別はない、ということです。
たとえば、牛丼のかわりに親子丼や豚丼を選んでも、適量を食べている限り、アルデヒドスパークを引き起こす心配はないでしょう。タンパク質と脂質がそろっていて、一人前の白ご飯の量であれば、血糖値の急上昇を抑えられるからです。

