・結局何にも勝る楽しさ
さて、ここまで電動自転車についてネガティブ寄りに語ってきたが、実のところ筆者は電動自転車をいたく気に入っている。それとなく使用回数を増やしていって、何とか「これは私の所有物である」ということにして家族から奪い取れないかと画策するほどには気に入っている。
何故か。「楽しいから」に尽きる。筆者のような体力に乏しい人間にとって、乗っていて全く疲れないというのは何よりも大きい。そしてここまで示唆してきた通り、筆者は全てを忘れて調子に乗りやすい性質であるため、疲れないと知ったらどこまでも走り出す。
サイクリングに没入したのは、正直に言って初めて自転車に乗った子供の頃以来かもしれない。翼が生えたようにぐんぐん前に進む。世界がどんどん広がっていく。阻むものは何もない。
自宅の近所に、「通常の自転車で立ち漕ぎをすれば登りきれなくもないが、いざ立ち漕ぎをして途中で力尽きたところを人に見られると恥ずかしい」くらいの坂、すなわち個人的に「世間体破りの坂」と呼んでいる勾配が存在するのだが、その程度の坂は電動自転車の敵ではない。
より険しい、見上げるくらいの坂であっても、多少ペダルに力を込めればたやすく走破できる。もはやゲーム感覚で坂を歓迎してしまっている自分さえいる。まして平地を走っている時は鼻唄が止まらない。「動く歩道」ならぬ「座る歩道」に乗っているような気分である。
・たまにはこうして
というわけで、それなりに長々と「驚いたこと」3選を語ってきたが、いかがだっただろうか。筆者は電動自転車に出会えて良かったと思っているし、変な話、出会ってしまって後悔している部分もある。
忘れかけていた「乗り物に乗る楽しさ」が呼び覚まされて幸福である一方、果たして自分は通常の自転車に戻ることができるのだろうかという不安も否めない。とはいえ、もし本記事を読んで電動自転車に興味を抱いた方がいるなら、是非ともその心に従うことをお勧めする。
最新のファッション、最新のグルメ、最新のツール。それらを追いかけるのも良いが、たまにはこうして、ぶらりと横道に逸れるのも悪くなかろう。風の吹くまま、電気の走るままに。
参考リンク:パナソニック「ビビ・SL」商品ページ
執筆:西本大紀
Photo:RocketNews24.
