大会新記録を更新した今年の箱根駅伝でも、多くの選手が着用していた“厚底シューズ”。過酷なレースで足への負担を軽減し、驚異のスピードを支えるこのシューズを、足腰が弱っているシニア世代に贈るケースが増えているというが、大丈夫なのか? 中高年の身体ケアにおいてゴッドハンドといわれる「桐ヶ丘整骨院」の秋山融院長に話を聞いた。
話題の“厚底シューズ” シニアには危険?
青山学院大が10時間37分34秒の大会新記録をマークし、3年連続9度目の総合優勝を果たした2026年の箱根駅伝。5区間で区間新記録も叩き出し、記録ラッシュの大会となった。
超人的な走りを見せる駅伝選手たちの足元に注目すると、多くが「厚底ランニングシューズ」を履いていることがわかる。
一見すると走りにくそうなフォルムだが、なぜ厚底シューズであれだけのスピードが出せるのか。山梨学院大のスポーツトレーナーを務めた経験も持つ、桐ヶ丘整骨院の秋山融院長は次のように解説する。
「ソールが高くなると、そのぶん足が長くなりますよね。すると一歩のストライド(歩幅)が通常時より大きくなるので、タイムが縮まりやすくなるのです。弾むような走り心地を得られるので、走りやすく感じることもあるかと思います」
長時間の走行により、強い負荷がかかる駅伝選手の足を支える厚底シューズ。足腰が弱いシニア世代も、歩行や運動の際に厚底シューズを履けば動きやすくなるのだろうか。
「厚底シューズを履いて走る駅伝選手は、当然ですが日ごろから相当なトレーニングを積んでいます。筋肉量が多く、体脂肪率は数パーセントしかない。インナーマッスルが鍛えられており、体幹もしっかりしています。彼らのようなアスリートが着用すれば、厚底シューズは真価を発揮するでしょう。
しかしながら、シニア世代の方は筋肉量が少なく、骨粗相症を患っている人も多くいます。厚底は足首が固定されず、重心が不安定になるので転倒リスクも高い。運動習慣のないシニアが、いきなり厚底シューズに挑戦するのは控えたほうがよいでしょう」
厚底で足が太くなる可能性も…
秋山院長は、厚底シューズを履いたときの“足指の使い方”についても指摘する。
「厚底はつま先が地面に着かないため、足指を使わなくても進むことができます。足指は、“第二の心臓”と言われるふくらはぎの深層筋とも大きな関わりのある部位です。厚底シューズを履いて足指を使わずに歩いていると、ふくらはぎの筋肉へのアプローチが低下し、足が弱りやすくなる懸念もあります。
足の筋トレを欠かさない駅伝選手なら問題ありませんが、足の筋肉量が少ないシニアが履くと足に負担を与えることになるでしょう」
厚底シューズを履いて足指を使わず歩くことにより、こんな弊害もあるという。
「女性の患者さんから『足が太くて悩んでいる』という相談を受けることがあります。上半身が細いのに足だけ太いと感じる場合、厚底シューズやヒールの高い靴を日常的に履いていることが原因の一つとして考えられます。足指を使わない歩行により、ふくらはぎの深層筋が鍛えられず、足がむくみやすくなってしまうのです。
その証拠に、裸足で生活する先住民族の人々の中に、上半身が細いのに足だけ太いという方を見たことがありません。綺麗で健康的な足を保つためには、足指でしっかり地面を踏みしめながら歩くことが大切です」
一方で、厚底シューズを履くことで防げる可能性のある足の疾患もあるという。
「歩くとかかと側に痛みが出る『足底腱膜炎』は、厚底シューズを履くことで予防になるという見解もあります。この疾患は、足底腱膜に過剰な負荷が繰り返しかかることにより発症します。そのため、ソールに厚みがある靴を履くことで、地面からの衝撃が吸収され、足底腱膜への負担が軽減されると考えられます。
ただし、厚底シューズを履き続けることにより外反母趾など別の疾患があらわれる場合もあるので、自分の足の状態は常にチェックし、異常があればすぐに病院へ行ってください」

