悪質な占いサイトを利用したスピリチュアル詐欺(スピ詐欺)。「〇〇をすれば運が開ける」「〇〇という鑑定士が占うことで金運がアップする」という文言に釣られ、高齢者を中心に被害が広がっている。問題に取り組む弁護士の伊藤建さんの法律事務所には多数の相談があり、これまでの被害額の合計は20億円以上になるという。どのような手口で金銭を騙し取り、そしてなぜ多くの人が騙されてしまうのだろうか? 実際に被害に遭った高齢者と伊藤弁護士にそれぞれ話を聞いた。
「やめたくてもやめられなくなる」スピリチュアル詐欺の実態
実際にスピ詐欺の被害に遭ったOさん(60代女性)は、合計で約300万円を騙し取られた。
「スマホに表示された、占いのネット広告がきっかけでした。もともと占いに興味があり、無料で鑑定してくれるという言葉に釣られて軽い気持ちで始めたんです」(被害者Oさん)
最初はたしかに無料だったが、途中で「これ以上の結果を知りたければ、ポイントを購入してください」と案内されたという。
「あなたには大金が手に入る運がある、このまま続ければ運が覚醒して宝くじの高額当選につながる、と言われて。宝くじが当たるなら多少お金を使っても大丈夫、と考えてしまいました」(被害者Oさん)
しかしやり取りを続けても鑑定はいつまでも終わらない。結局Oさんは3年近くその占いサイトを利用し続け、気付いたときには300万円を失っていた。
Sさん(70代女性)も、Oさんと同じくインターネットの無料広告を見たのがきっかけで、約300万円のスピ詐欺被害に遭った。
「運気を鑑定するという鑑定士からメールでさまざまな指示が来て、それをクリアするために返信するんです。クリアしないと特別な運気が取得できないと…」(被害者Sさん)
Sさんの場合は鑑定士が代わる代わる何人も現れた。これもスピ詐欺の手口のひとつだという。
「もっと早く運気を取得するためと別の鑑定士を紹介されたり、鑑定士の弟子が出てきたり。最終的には4、5人とやり取りしていました」(被害者Sさん)
どちらのケースも「占いを続ければ運気が上がる」という荒唐無稽な話だが、その状況をおかしいとは思わなかったのだろうか。
「途中何度か怪しいとは思ったんですが…時間もお金もたくさん使っていたので、本物だと信じたかった。すべてが無駄になるのが耐えられませんでした」
結局相談した友人から指摘されるまで、Sさんは「詐欺被害に遭った」とは認められなかったという。
高齢女性がターゲットに。スピ詐欺ならではの巧妙な手口とは?
法律事務所Zが占い詐欺被害者の相談に取り組み始めたのは、2022年の9月頃。現在では相談件数は毎月平均60件以上、多いと80件を超える月もある。被害者の多くは60歳から80歳の高齢者、それも女性がほとんどだという。
一律に原因を語ることは難しいというが、女性向け雑誌などには占いページは欠かさずあることから分かるように、そもそも男性よりも女性のほうが占いなどを身近に感じている傾向が強いという。
また高齢者の被害者が多いのは、子どもの独立やパートナーとの死別で孤独感が生じ、その寂しさを埋めようとして、スピリチュアルサイトの占いで鑑定士とのやり取りにハマってしまう人が多いためだそうだ。
「悪質なサイトへアクセスするきっかけは、まずインターネット上の無料鑑定の広告。そして個人情報リストの流出が原因で送られてくるメールの可能性も」(伊藤建弁護士)
その後はアクセスした人間に何度もメールのやり取りをさせて課金ポイントを消費させる。その手口は、先のOさん、Sさんの被害例で見たとおりだ。
「たとえば鑑定士から『1から10までの数字をひとつずつメールで送ってください』と指示が来ます。メールを1通送るのに1500円分のポイントが必要。つまり10通のメールに1万5000円が必要なんです」(伊藤建弁護士)
相手に何度もメールをさせてお金を奪う手口は、出会い系サイトのサクラを思い出させる。実際に出会い系サイトやマッチングアプリで詐欺をおこなっていたグループが、スピ詐欺に転じている例も多いという。
こうしたスピ詐欺の厄介な点として、返金が難しい点も指摘する。
「当たり前ですが“占いが当たらない”“開運のために行動を起こしても運気が上がらない”というだけでは詐欺には問えません。違法となるのは、鑑定士がいないとか、鑑定士がいても何度もメールさせてポイントを消費させる目的と判断される場合ですが、裁判所は被害者側にも落ち度があるとして過失相殺をするケースがほとんどで、全額回収は難しいんです」(伊藤建弁護士)
実際に被害金額の5割から7割返還での和解例が多いという。

