企業の不祥事や重大な失敗が明るみに出たとき、「なぜ誰も止めなかったのか」と思うことがある。組織のトップが状況に流されたり、誤った判断を下してしまうのは、なぜなのか。スターバックス コーヒー ジャパンやザボディショップでCEOを務めた岩田松雄さんは、正しい判断をするために、ある姿勢を貫いてきたという。企業のリーダーが最も重視すべきこととは。
『新版「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
一番に事実を重視する
最も意思決定を失敗しやすいのは、その材料となる「事実」が足りなかったとき、あるいは、「事実」が間違っていたときです。それでは、正しい判断ができるはずがありません。だからこそ重要なのが、正しい事実を集める努力です。
例えば、一次情報を取ること。現場の社員から直接話を聞いたり、実際に自分の目で確かめたりすることがとても大切です。現場にこそ事実があり、最も信頼できる一次情報があります。
では、どうして一次情報が重要なのか、おわかりでしょうか。情報が組織のピラミッド構造を上がってくるときに、途中で報告者の判断が加わって、「事実」が歪められていく可能性があるからです。
又聞きや伝言ゲームでは、悪気はなくても「事実」が間違って伝えられてしまう危険があるのです。それをもとに意思決定をしたら、うまくいかないのは当然です。
意思決定の際に、それが「事実」なのか「部下の判断」なのかをはっきり分ける、ということが大切です。例えば、部下から報告を受ける。良い話のときは、少々誇張されても心配はいらないことがほとんどです。
「事実」と「判断」を混同しない
問題は、悪い話のときです。部下の立場になってみてください。上司の前で、できるだけ自分に都合の悪い話はしたくないものです。悪い情報や問題はできるだけ小さく見せたい。それが人間の心理だと思います。
そこで何が起こるのかというと、「事実」に自分の判断を加えた「意見」にしてしまうことがよくあるのです。悪気はなくても、自分に不利な情報にならないように、つい「事実」を加工してしまう。しかし、これでは、上司としては正しい判断ができなくなります。
ときどき重大な意思決定を間違える会社があります。
それは、間に何度も部下の判断が入ってしまっているからだと思います。現場では全然、大丈夫ではないのに、部下としては上司になかなか本当のことは伝えにくい。そのために、「事実」ではなく、大丈夫だと思うという「判断」を伝えてしまう。結果的に、トップと現場で認識に大きな乖離ができてしまうということが起こるのではないでしょうか。
何かの報告を受けるとき、私がいつも部下にお願いしていたのは、「事実と判断は分けてくれ」ということでした。そうすれば、両者の混同をせずに済みます。
まずは、事実を聞く。その上で、それについて部下はどう思ったのか、を聞く。これをやらないと、判断だけを聞いて終わってしまいかねない。事実が聞けないのです。
事実を聞く。現場の意見を聞く。その上で、自分はさらに上の観点で判断する。最悪の場合、リスクはどれくらいなのか? 本当に大丈夫なのか? それらを考慮した結果、部下の判断とは違った判断をする場合もあります。
事実には、一番の説得力があります。だからこそ、まずは事実や一次情報を重視する。
その上で、リーダーは最終判断をするのです。

