2006年のサッカー・ドイツW杯は1分2敗という戦績で、日本はグループリーグで敗退した。中田英寿、小野伸二、中村俊輔らタレントを揃え、2002年のW杯を上回る活躍を期待されたが、これを大きく裏切る結果となったのである。
特に衝撃的だったのは、初戦のオーストラリア戦の逆転負けだ。1-0とリードしていたものの、残り10分ほどで立て続けに失点し、1-3で敗れた。クロアチア戦は0-0のスコアレスドローと粘ったが、続くブラジル戦では先制ゴールを奪ったものの、結果は1-4の大敗。敗れた2試合については、いったん綻びるが出ると修整できない守備と、ジーコの采配が問題視された。
帰国後の記者会見では、かなり批判的な声が噴出。衝撃を受けたのは、ジーコ監督のひと言だった。「日本が勝てなかった原因は何か」という質問に対し、
「フィジカルが弱かったからだ」
そう答えたのだ。
戦術的な失敗や選手の決定力、守備の問題ではなく、他国よりも肉体的に劣っていたことを最大の理由に挙げたことには「今になってそれ?」と唖然。フィジカル的に弱いのは最初から分かっていたことで「そこをなんとかするのが監督の仕事だろう」と思い、大いに失望した。
ただ、今振り返ってみると、ジーコの指摘は間違っていなかったと言える。最近の日本代表は、W杯ではドイツ、スペインといった強豪国相手に、互角に近い戦いができるようになった。これはMF遠藤航をはじめ、フィジカルが強く、対人プレーで負けない選手が増えていることが大きな理由だろう。
日本の選手はスピード、テクニックは世界と比較しても遜色はない…そう評価されていたが、フィジカル面が劣っていたのは確かだ。十数年の時を経てフィジカルの重要性が証明されたわけで、そういう意味ではさすがジーコ、と言えるのかもしれない。
(升田幸一)

