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「そんなこと言って本当は…」なぜ若者たちは人の言葉に何か裏があると考えてしまうのか

「そんなこと言って本当は…」なぜ若者たちは人の言葉に何か裏があると考えてしまうのか

若者も怯え迷って生きている

横向くシンドロームへの若者の反応は素直というか肯定的だ。その通り怖いんです、と。

「自分の意見を言うのは怖い」

「否定されたらどうしよう。味方がいると安心する」

「匿名性を好むのも、そういうことだと思います」

否定は怖い。誰しもそうだ。でもいまの若者は余計そうなのだと思う。

とある取材を受けていたとき、ちょうど取材してくださった方が「Z世代」だった。ため息交じりに言う。

「受験期も、失敗しないナントカっていう参考書が多くて。買ったんですけど、失敗したらどうなるんだろうって。若者に失敗を許さない世の中かもしれませんね」

自分の意見を言うのが怖い、否定されたくない、匿名じゃないと書けない。それを自覚しながら(別の)若者はこうも語る。

「でもそれは上司側からすると、他責思考なのだろうなと思う」

若者とて、逡巡と葛藤そして恐怖のなかで生きているのだ。それこそ昔からそうだったはずである。思春期という概念があり(そういえばあまり聞かなくなった気がする)、コンプレックス(複雑さ)を抱え、若者は生きている。

楽しいクラスで一体感を持ちつつ多元的な価値観だの、多様性を重視して倫理性が高いだの、なに抜かしとんねんと若者も思うのじゃなかろうか。こちとらそんな崇高な思想にたどり着く前の、もっと肌身の人間関係で悩んどるっちゅうねん。

同性愛への理解があるだとか、弱者への配慮が行き届いているだとか。親友がカミングアウトしてきて、即座に笑顔で素晴らしいね! って言えへんやろ(言える方は素晴らしい)。より正確には、「言えなかったら人間失格」みたいなのは違うだろ。驚き、考え、悩み、話し合い、そうやって違いを理解していくんじゃねぇのか。

それが年を重ねるということだ。熟達だ。年の功を捨てて若者こそ正しいとか言い出すのは、人間が学習できることをまるで無視した暴論であり空論だ。

コミュニケーションですべて解決? 

結局ここまで述べたような問題は、コミュニケーションさえ取れれば解決できそうでもある。飲み会などインフォーマルコミュニケーションも使いながら、これからのキャリアについて話し合えれば、辞めたい気持ちがよぎっても建設的に前を向けるかもしれない。コミュニケーションのある職場はハラスメントも減る傾向がある。

でもそれは気が遠くなるくらい難しい。メディアやネットが面白おかしく尾ひれをつけてハラスメント大喜利を繰り出して、不安を煽るから。コミュニケーションを取ること自体が怖いから。

就活の面接みたいに妙にスラスラと思ってもいないことを語れることなど、われわれの日常にはほとんどない。つっかえながら、考えながら、途切れ途切れに思いを語り、相手の話を聞く。そういう不完全で面倒なコミュニケーションを重ねることでしか、わかり合えることなどないと思う。

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