「6人きょうだいの長男を代わって」
小学6年生から舞い込んだこんな依頼を受けて、弟妹5人の世話や家事に追われるこの少年に代わり、霜降り明星のせいやが長男になって子供たちと1日を過ごす。
そんな様子が「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送テレビ)で放送された。ところがこの模様が「育児放棄」「ヤングケアラー状態」などと指摘されて大炎上。局が「取材対象者やご家族への誹謗中傷、詮索や接触は厳にお止めいただくようお願い申し上げます」という異例の声明を発表し、TVer配信停止の騒動に発展している。
1988年3月に始まったこの番組は、スタジオを探偵事務所(探偵局)に見立て、視聴者から寄せられた依頼を探偵局員が調査。その過程を撮影したVTRを流すというものだ。依頼内容は街頭調査や実験から、場所探しや物捜しまで多種多様。本格的な調査を伴うテーマのほか、放送時間を稼げないようなちょっとした依頼の場合は「小ネタ」集としてまとめて放送されるが、これも同番組の売りになっている。
放送担当記者が言う。
「番組の構成上、家族を扱ったテーマが多く、そこに一般人だからこその、作り物ではない『家族愛』が滲み出て、視聴者がホロッとさせられることが多い。特に大家族をテーマにした密着モノは、視聴率を稼ぐ鉄板コンテンツです。ところが今回は12歳の少年の『長男をやるのが疲れた』という悲鳴が、視聴者には美談ではなくSOSとして届いてしまった。そうなると今回の炎上はこの番組だけの問題にとどまらず、『大家族』への密着という鉄板コンテンツの是非が問われかないことに」
大家族企画を根底から覆す騒動に発展しかねないというのである。
少子化対策が叫ばれる中、大家族は長らくテレビにとってのキラーコンテンツだった。しかし今回の炎上で明らかになったのは「お兄ちゃんなんだからね」という昭和的呪縛が、もはや令和の価値観にはそぐわなくなったこと。「多産がもたらす子供へのしわ寄せ」を、社会が許容しなくなった証なのかもしれない。
「となれば、これまで『お手伝いする健気な子供』として描けたシーンが、今後は『不適切な労働』『ネグレクトを助長する描写』と認識されかねない。特に子供に料理やオムツ替えをさせている場面などは、BPO(放送倫理・番組向上機構)への通報対象として、コンプライアンスチェックで真っ先に引っかかってしまう可能性が出てきます」(前出・放送担当記者)
今回の問題で視聴者がテレビに突き付けたのは、テレビが提示する『家族の絆』というファンタジーをもはや共有でなくなった、という明らかな意思表示にほかならない。令和のテレビ番組から大家族特番が消える日は、意外に近いかもしれない。
(灯倫太郎)

