これは、今から20年以上前に、私が若手芸人として活動していた頃、芸人仲間から聞いた実話として語り継がれている怪談である。
テレビという極めて日常的な空間に、説明のつかない「異物」が紛れ込んだ──そんな話だった。
実話として語り継がれる「テレビ怪談」
「なぜ、芸人を目指したんですか?」
ある日、私は一人の先輩芸人に、何気なくそう問いかけた。
「うちはな、テレビをあんまり見てはいけない家やったんや。その反動で、テレビを見るのが楽しみで仕方なかったんやと思う」
「厳しいご家庭だったんですか?」
「いや、そういうわけやないねん……。ただな、今でもよう分からん不思議なことがあってな……」
そう言って先輩が語り始めたのは、彼自身ではなく、母親が体験した不可解な出来事だった。
新宿アルタ前に現れた「緑のワンピースの女」
当時、先輩は高校を中退し、フリーター生活を送っていた。昼前に起き、リビングで母親と食事をしながらテレビを見る。それが日課だった。
テレビでは、国民的番組『笑っていいとも!』が始まる。
新宿アルタ前の中継映像が一瞬映り、スタジオへ切り替わる──誰もが見慣れた、何の変哲もない光景である。
だが、ある12月の日。
画面の隅に映る人混みの向こう側に、母親は異様な存在を見つけた。
「あの人……寒くないのかしら?」
母親が指差した先には、ノースリーブの薄い緑色のワンピースを着た女性が、下を向いたまま微動だにせず立っていたという。
周囲はコートやマフラーに身を包んだ若者ばかり。
その女性だけが、明らかに季節外れの格好で、場違いな空気を纏っていた。
しかし、その瞬間、先輩の目には何も映らなかった。
【関連】【國澤一誠のゾッとする実話怪談】第1夜 「覗くな」事故多発カーブミラーに映ったもう一つの世界
