
80代、90代になっても、記憶力や集中力が50代並みに保たれている人たちがいます。
驚くほど頭が冴え、日々を活動的に過ごす彼らは、研究者から「スーパーエイジャー」と呼ばれています。
なぜ同じように年を重ねても、脳の老化がここまで違うのでしょうか。
最新の研究と当事者の生活から、そのヒントが少しずつ見えてきました。
目次
- スーパーエイジャーとは何者なのか
- 共通して見えてきた生活の特徴
スーパーエイジャーとは何者なのか
「スーパーエイジャー」とは、単なる元気な高齢者の愛称ではありません。
米シカゴ大学で進められている研究では、80歳以上でありながら、記憶検査の成績が平均的な50〜60代と同等、あるいはそれ以上の人が、厳密な基準のもとで選ばれています。
参加者は数日かけて詳細な評価を受けます。
紙と鉛筆による認知検査、家族歴の聴取、脳MRI、血液検査などを通じて、脳の構造、遺伝的要因、免疫系、生活習慣や社会的背景まで幅広く調べられます。
研究者が特に注目したのが、脳の構造です。
一般に加齢とともに大脳皮質は薄くなり、それが認知機能の低下と関係すると考えられています。
しかしスーパーエイジャーの脳MRIを調べると、平均的な高齢者で見られる「皮質が薄くなる現象」がほとんど確認されませんでした。
さらに、注意や記憶に関わる前部帯状皮質では、50〜60代よりも厚いケースすら見られたと報告されています。
記憶成績だけでなく、脳そのものが「若い状態」を保っている可能性が示唆されたのです。
ただし、研究者自身も「なぜそうなるのか」はまだ完全には分かっていないとしています。
遺伝、免疫、生活習慣、心理社会的要因などが複雑に絡み合っていると考えられています。
共通して見えてきた生活の特徴
スーパーエイジャーたちの生活を詳しく見ると、意外なことが分かります。
全員が完璧な健康習慣の持ち主というわけではありません。
過去に喫煙歴がある人も一定数含まれており、「理想的な生活を送った人だけがなれる」という単純な話ではないのです。
それでも、多くのスーパーエイジャーに共通して見られる傾向があります。
その一つが、年齢や体力に応じた形での「継続的な活動」です。
毎日数千歩を目標に歩く人、合唱や音楽活動に関わり続ける人、パズルや家系図づくりに没頭する人、さらには高齢になってから競技スポーツに本格的に取り組む人もいます。
重要なのは強度ではなく、できる範囲で動き続けている点です。
もう一つ大きな特徴が、社会的なつながりです。
スーパーエイジャーは家族や友人、地域活動との関わりが強く、人と話し、人と協力し、人の役に立つ場面を日常的に持っています。
研究では、こうした人々の脳に社会的行動と関係すると考えられている特殊な神経細胞が多い可能性も示されています。
さらに、彼らは「新しいこと」を避けません。
編み物や写真、語学、音楽、運動など、内容はさまざまですが、共通しているのは、慣れきった作業だけに留まらず、少し頭を使う挑戦を続けている点です。
研究では、異なる活動であっても、新しい技能を学ぶこと自体が脳への刺激になることが示されています。
食生活については一律の正解はありませんが、多くのスーパーエイジャーは極端な偏りを避け、比較的バランスの取れた食事を心がけています。
ただし、研究者は「食事だけで説明できる現象ではない」と強調しています。
誰でも取り入れられるヒント
スーパーエイジャーの研究から見えてきたのは、「老化を完全に防ぐ魔法の習慣」ではありません。
むしろ、完璧でなくてもよいから、身体を動かし、頭を使い、人とつながり続けることが、脳の健康を支える可能性があるという現実的な示唆です。
重要なのは、年齢や体力に応じて続けることです。
その積み重ねが、将来の脳の状態に影響を与えるかもしれません。
スーパーエイジャーは特別な存在でありながら、同時に「今からでもできることはある」と教えてくれる存在でもあるのです。
参考文献
Lajuana is 89, with the body and mind of someone decades younger. What are the secrets of the superagers?
https://www.theguardian.com/science/2026/jan/24/secrets-superagers-people-body-mind-decades-younger
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

