高市早苗首相は、1月25日に出演したフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」にて、2026年度内に食料品の消費税減税を目指す考えを示した。中道改革連合の野田佳彦共同代表は今秋からの導入を訴えている。
いっぽう、国民民主党の玉木雄一郎代表は、飲食店などの税負担、事務負担が増える可能性があることを示唆したうえで、十分な議論を重ねなければ「潰れる飲食店が出てくる」と牽制した。実際、消費税減税の飲食店への影響は大きそうだ。
値上げも限界を迎えている居酒屋チェーン
「集客への影響が何より心配です。食料品の消費税がゼロになれば、お客さんの多くが宅飲みに流れてしまって、もうお客さんが来なくなります」
都内で複数の居酒屋店を運営する経営者は不安をこう口にする。消費税の減税は集客マイナスへの影響が何より大きいと見ているのだ。
食品スーパーやディスカウントストアはコロナ禍以降、総菜部門の強化を図ってきた。イオンは2024年6月に食の専門家チームが開発した商品をプロの料理人の製造技術で生産する新工場を稼働。「まいにち、シェフ・クオリティ」という新コンセプトで、高クオリティの総菜をイオンや「まいばすけっと」など関東エリア約1500店舗への提供を開始した。
「ドン・キホーテ」のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは総菜強化の一環として社内コンテスト「デリカの鉄人 X(クロス)」を実施。そこから生まれた商品を全国のドン・キホーテ、アピタ、ピアゴで販売している。
巷ではスーパーの総菜コーナーが充実していることに加え、近年のインフレ傾向で消費者の節約志向は高まった。そしてコロナ禍以降に宴会需要は消失。居酒屋店の集客状況はすでに厳しい。
ワタミのサブウェイを除く国内外食の2025年4-12月の客数は前年同期間比で1.9%減少した。ただし、客単価が上がっているために売上高は2.4%増加している。客数減を客単価で何とか補っているのが現状なのだ。
「庄や」を運営する大庄も2025年度の客数は0.5%の減少。客単価増で売上高は1.3%増だった。2025年9-12月の客数は4.5%も減少し、売上高は0.9%減と前年を割り込んでいる。
多くの居酒屋店は宴会客から、ふらりと立ち寄るフリー客を獲得する方向へと舵を切った。しかし、消費税の減税でスーパーの総菜に客をとられる可能性が出てきたわけだ。
大庄の2025年9-11月の営業利益率はわずか0.6%だ。黒字ギリギリのラインで経営している。こうした店は多く、人件費や水道光熱費が高騰する中で、値下げなどできる余裕もない。これ以上の客数の減少は中小の居酒屋店を中心に甚大な影響を及ぼすだろう。
複雑怪奇な消費税が招く事業者の混乱
今回の衆院選で焦点のひとつとなる「消費税減税」には、食料品消費税ゼロが「非課税」か「免税」かというやっかいな問題もある。
「免税」の場合、課税仕入れにかかる消費税額を控除することができる。いっぽう、「非課税」は仕入れにかかる税がコストとなり、飲食店の利益を圧迫することになるのだ。
日本維新の会の藤田文武共同代表は、1月24日のニコニコ主催の「ネット党首討論」にて、免税寄りの発言をした。
これに対して、国民民主の玉木雄一郎代表は、自身のXにて「免税取引」は「仕入れ税額控除可→還付金→事務負担大、資金繰り懸念」とそのメリットとデメリットを示している。控除ができる免税取引であっても事務負担が大きいうえに、還付までに時間を要するため、キャッシュフローが悪化するというのだ。
飲食店を経営しているのは、個人事業主や零細企業が多い。ただでさえ、インボイスの導入で事務負担が増えている中、更なる負担を強いることにもなるわけだ。
飲食店と卸売業者との、神経戦とも言うべき微妙な駆け引きが起こる懸念もある。
食材を提供する卸売業者が、消費税分を値下げすれば飲食店には損は生じない。例えば、現行で1万円の食材に800円の消費税がかかっていれば、売上消費税から800円の仕入税額控除を受けることができる。食料品の消費税がゼロになり、卸売業者が価格を1万円に下げれば、飲食店への影響はない。
しかし、すでに仕入れを済ませた卸売業者が、1万800円で売れると想定していた食材を1万円で販売するだろうか。消費税分を価格に転嫁するかどうかの決定権は、事業者が握っている。食料品の税率がゼロになったとしても、その分の価格を引き下げる義務はない。つまり、卸売業者は便乗値上げができる。
これは事業者側に非があるのではなく、消費税という仕組みそのものが抱えている問題だ。
当然、飲食店には消費税分の値下げをしてほしいと要求することができる。価格交渉力が強い大手飲食チェーンはまだしも、仕入れ量が少ない個人店の要求が簡単に通るとは考えづらい。

