「タブー」の境界線
これが、多くの人が抱える「モヤモヤ」を刺激し、炎上へと発展するのです。
そこで、ここ数年で起きた具体的な炎上事例を振り返ってみましょう。今から挙げる事例は、世の中の「モヤモヤ」や「持たざる者」の感情を、いかに安易に刺激してしまったかを示しています。
▼コンビニ弁当の「上げ底」問題
ある大手コンビニチェーンの商品に関して、「パッケージの底に隠された空間があり、見た目より内容量が少ない」という疑惑がSNSで拡散されました。これに対し、企業のトップが「そんなアコギなことはできない」と反論したところ、さらに多くの消費者から「いや、それは虚偽だ」「消費者を馬鹿にしている」といった批判が殺到し、炎上しました。
このケースは、消費者が「企業に騙されているのではないか」という不信感、つまり「持たざる者」である消費者と「持つ者」である企業との間に存在する潜在的な不満を刺激してしまった典型例です。
▼有名フィットネスクラブの広告
あるフィットネスクラブの広告が、「お手伝い」という名目でジムの清掃や業務を会員に募り、その報酬が通販サイトのギフト券だったため、「労働に対する報酬が不適切だ」と批判を浴びました。
これは、低賃金労働や経済的搾取に対する社会的な不満が背景にあり、「お手伝い」という言葉の裏に隠された「安く労働力を確保したい」という企業の思惑が透けて見え、多くの人々の怒りを買ったのです。
品川駅ディストピア事件「今日の仕事は、楽しみですか」
▼品川駅のデジタルサイネージ広告
「今日の仕事は、楽しみですか。」というメッセージを掲げたデジタル広告が、SNSで大喜利化し、炎上した事例です。特に月曜日の朝に通勤するビジネスパーソンからは、「心がえぐられる」「ディストピアのようだ」といった声が相次ぎました。
この広告は、人々の仕事に対するストレスや、満たされない現状という「持たざる者」の感情を意図せず刺激してしまった結果、炎上へと発展したのです。広告主の意図は「仕事を楽しむというポジティブなメッセージ」だったかもしれませんが、受け取る側の状況や感情を想像できなかった典型的な失敗例です。
これらの事例からわかるように、炎上は特定の誰かを攻撃する意図がなくても、受け取る側の感情を逆撫でしてしまうことで、一瞬にして起きるという恐ろしさがあります。

