ベースラインのはるか後方、壁に背が付きそうなポジションからリターンを深く打ち返すと、瞬時にポジションを上げ、強烈なフォアをコーナーに打ち込む。
相手がネットに詰め時間を奪いに来ようとも、スピンをかけたパッシングショットで、次々にライン際に強打を刺した。
サービスも快調で、ファーストサービスは83%の高確率で決まり、そのうち80%をポイントにつなげる。完璧とも言えるパフォーマンスに、予選から快進撃を見せてきたアレクサンダー・ブキッチ(オーストラリア/世界ランキング95位)も打つ手がない。第4シードのキャスパー・ルード(ノルウェー)が、6-3、6-2、試合時間わずか58分でベスト4へと駆け込んだ。
現在世界12位、最高位は2位のルードの実績と実力を思えば、ジャパンオープンテニス4強入りは、順当な結果に見える。だが日本好きを公言する彼の、東京での戦いは苦闘の歴史。2022年から3年連続で出場するも、白星は2年前の1つのみだった。
クレーコート育ちの彼にとって、多くの選手が「速い」と口を揃える有明のサーフェスは、持ち味が生かせぬコートだろう。キャリア全体の勝率を見ても、クレーは73.6%なのに対し、ハードコートでは58%まで落ちる。
その彼が、今大会で好調なのには、理由があるのか――?
その問いにルードは、「過度に期待していないのが、良いんじゃないのかな」と笑う。さらには、自身の「ハードコートでのプレーの向上」、そして「新しい公式球」も要因にあげた。
「ここのサーフェスは今年も速いが、速いハードコートでも勝てるようになったのは、自分のプレーが、正しい方へと向かって上達しているからだと思う。
あとは公式球が、今年からヨネックスに変わった。僕のラケットもヨネックスだから相性が良いのか、打感がすごく心地良いんだ」
「ボールそのものは他社と大きく違うわけではないだろうが、少しのプレッシャーなどの差で打感は変わる。普段はストリングスの調整が必要だが、今回はそれも必要ない。スピンのかかり具合も良いと感じている」
これらが、ルードが挙げた考え得る要因だ。 やや話は逸れるが、大会ごとに公式球が変わることの弊害については、選手たちから近年、大きな声が上がっていた。
今大会ベスト4に進出中のテイラー・フリッツ(アメリカ/同5位)は、「この話題を話し始めたら、1時間はかかるよ」と苦笑いしつつ、言葉を紡ぐ。
「例えばサーフェスと気温、そして湿度などの因子が重なると、ボールが瞬く間に重くなり、ものすごく遅くなる。そんな時は、7・9ゲームよりも早く新しいボールに変えるべきだと思う。それ以上に大きな問題が、毎週のようにボールが変わること。ただ最近はツアーも対処してくれて、統一されるようになってきたのは良かった」
フリッツの言うように、今大会の公式球は、来週の「ロレックス上海マスターズ」(中国・上海/ATP1000)でも使われる。その動きについてもルードは、「ケガのリスク軽減という面でも喜ばしい。ツアーや運営サイドが選手の声に耳を傾けてくれた」と歓迎の意を表した。
「日に日に僕のプレーは良くなっている」と、静かな自信を言葉に滲ませるルードは、「その流れをこのまま持続していきたい。次の試合では、それが必須になるのだから」と続ける。その「次の試合」で相対するのは、世界1位のカルロス・アルカラス(スペイン)。
過去の対戦成績はアルカラスが4勝1敗でリード。ただ直近の昨年11月のATPツアーファイナルズでは、ルードが勝利している。
なお、両者の通算3度目の対戦は、2022年の全米オープン決勝戦。世界最高峰の戦いが、有明コロシアムで繰り広げられる。
取材・文●内田暁
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