大学で学んだことは、卒業してから役に立つもの。
そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。けれど、学びはもっと早い段階から、地域の中で活かすことができるのではないでしょうか。
北九州で行われたある取り組みは、そんなことを考えさせてくれます。舞台は動物園。そこに集まったのは、歯科大学で学ぶ学生たちと、子どもたち、そしてその家族でした。テーマは「歯」と「健康」。難しい話ではなく、遊びや体験を通して伝える工夫が重ねられています。
このイベントは、単なる一日限りの企画ではありません。大学が地域とどう向き合い、学生の学びをどのように社会へひらいているのか。その姿勢が確かに表れた取り組みでもありました。
動物園でひらかれた「歯と健康」を学ぶ一日

舞台となったのは、北九州市にある到津の森公園でした。
ここで行われたのが、体験型イベント「ずーっと はっぴー教室」です。
動物園と歯科大学。一見すると少し意外な組み合わせですが、会場ではその距離感を感じさせない工夫が随所に見られました。人形劇やクイズを交えながら、「歯」や「食べること」の大切さを伝える内容は、子どもでも自然と参加できる構成になっています。
動物の歯と人の歯を比べるプログラムも用意され、普段はあまり意識しない「口の役割」について、身近な視点から考えるきっかけがつくられていました。学ぶというより、楽しんでいるうちに知識が積み重なっていく。その姿勢が、静かに、けれど確かに表れた取り組みでもありました。

なかでも印象的だったのが、人形劇を使ったプログラムです。専門的になりがちな「歯」や「健康」の話題を、物語として届けることで、子どもたちが自然と引き込まれる構成が取られていました。黒い幕の前で繰り広げられるやり取りは、説明というよりも会話に近く、難しい言葉を使わずに伝える工夫が感じられます。
人形という存在を介することで、伝える側と聞く側の距離が縮まり、子どもたちが身構えずに耳を傾けられる。そうした効果も、この手法ならではのものです。保護者にとっても、横で一緒に聞きながら内容を共有できる点は、安心感につながっていたのではないでしょうか。

当日は約90名が参加し、子どもだけでなく保護者の姿も多く見られました。家族で一緒に体験し、同じテーマについて話す時間が生まれたことも、この取り組みの大きな意味のひとつと言えそうです。
なぜこのイベントが生まれたのか 地域と向き合う大学の視点

このイベントを特徴づけているのは、内容そのものだけではありません。
「なぜ、動物園で行うのか」「なぜ、学生が前に立つのか」。その背景に、大学としての考え方がはっきりと表れています。
福岡県では、人の健康だけでなく、動物や環境も含めて一体的に守っていこうとする考え方が広がっています。今回の取り組みも、そうした視点を踏まえたものです。動物園という場所を選んだのは、子どもたちにとって身近で、楽しみながら学べる環境であると同時に、「生きもの」と「健康」を自然につなげて考えられる場だからでした。
また、このイベントは大学が一方的に知識を伝える場ではありません。地域に開かれた場所で、子どもや保護者と同じ目線に立ち、対話を重ねることが大切にされています。難しい言葉を使わず、体験を通して伝える。その姿勢は、医療や健康を扱う大学だからこそ、丁寧に向き合ってきた部分なのかもしれません。
大学の学びを、教室の中だけにとどめない。地域の中で実際に使い、反応を受け取り、また学びに戻していく。今回のイベントは、そんな循環を形にした一例として位置づけられます。
