アメリカは日本と一蓮托生だと考えていない
しかし、戦後レジーム転換派は、そんなことは考えていない。彼らは、日米同盟を深化させようと言う。もっと露骨に言えば、日本の対米従属を一層強め、自衛隊を米軍の支配下に置くことによって、軍事力を強化しようというのだ。誰も明言はしないが、彼らの仮想敵国は中国だ。日米合同の戦力で、中国を封じ込めたいと考えているのだ。
戦後レジーム転換派は、戦前に日本が中国を侵略した事実を認めない。だから、たとえ閣僚になったとしても、A級戦犯が合祀されている靖国神社に参拝する。戦争指導者たちも、国を守るために戦った立派な英雄と考えているからだ。
私には、彼らがなぜそこまで中国を嫌うのかまったく理解できないのだが、その問題は別にしても、彼らの「米軍と手を握って、中国を孤立させる」という戦略は、あまりに筋が悪すぎると思う。
まず、そもそもアメリカが、中国と対決してまで、日本を守ることはなくなった。戦後、アメリカの中国に対する防衛ラインは、日本列島だった。共産主義の拡大を防ぐため、日本が反共防衛の砦だった。
だから、日本に手を出せば、米軍は中国に宣戦布告をしただろう。ところが、中国自身が資本主義を大幅に採り入れて変質したため、反共防衛の必要性はなくなった。だから、アメリカは防衛ラインを日本列島から、グアムに下げることにした。
それなら沖縄の基地を日本に返還して、グアム以東で再編成すればよいと思われるかもしれない。しかし、そうはいかない。沖縄は、米軍がアジアや中東に戦争を仕掛けるときに、実に便利な前線基地だからだ。しかも、その前線基地は、人件費を除けば、すべて日本政府が経費を負担してくれる。そんなおいしい利権をみすみす手放す必要はない。
それどころか、アメリカはさらなる負担を日本に求めてきている。沖縄の米軍の一部をグアムに移転させるための経費の一部として、日本政府は3000億円以上を負担する。それに加えて、辺野古の海を埋め立てて、米軍に新たな最新鋭の大型軍事基地をプレゼントするのだ。
なぜ、そこまでしないといけないのか。それは、戦後レジーム転換派が、日本が再び中国と戦争になったとき、アメリカの協力なしでは、とても中国を打ち破ることができないと考えているからだろう。
しかし、アメリカは、日本と一蓮托生だとは、まったく考えていない。アメリカはすでに中国と相互不可侵の関係を結ぼうとしている。先日のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、習近平国家主席が、安倍総理とは数十分の会談しかしなかったのに、オバマ大統領は国賓待遇で迎えて、8時間にもわたる会談をしたのは、その証拠だ。
そうしたなかで、日本がアメリカの威を借りて、中国の神経を逆なでするようなことを続けたら、戦争のきっかけを作り、国民の生命と財産を危険にさらすだけだということは、子どもでも分かるだろう。
安倍総理が靖国神社を参拝した時、アメリカ政府が「失望した」という声明を発表したのも、中国を不用意に刺激するなという強烈なメッセージだった。アメリカは、日本が反中の姿勢を示すことを快く思っていないのだ。
にもかかわらず、戦後レジーム転換派は、反中親米を貫く。彼らの中国嫌いという個人的感情のために、あるいは中国侵略を認めたくないという個人的な歴史観のために、日本の平和が脅かされているのだ。
アメリカの戦争に巻き込まれる日本
そしてついに彼らは行動に出た。憲法に明確に違反する集団的自衛権を行使しようというのだ。集団的自衛権の行使を容認したら何が起きるのか。それは、アメリカが引き起こす戦争に日本が巻き込まれるようになるということだ。
先日、独立総合研究所の青山繁晴氏とテレビで話す機会があった。私とは安全保障観が真逆の青山氏とは、事実認識から違うのだと思っていたのだが、共通点がたくさんあって、驚いた。
世界で最も軍事的に凶暴で喧嘩っ早い国はアメリカであるということと、そのアメリカは、正義のために戦争をするのではなく、利権のために戦争をするということ、さらに集団的自衛権の行使を容認したら、アメリカから自衛隊の参戦を要請してくるだろうという事実認識は、ほとんど一緒だった。
判断の違いは、その後の展開だ。青山氏は、日本は独立国なのだから、アメリカから大義のない戦争への参戦要請が来たら、堂々と拒否すればよいという。私は、日本政府が拒否できない、あるいはしないのだと思う。
理由は二つある。一つは、日本がアメリカに対して、圧倒的に弱いということだ。これまでのさまざまな日米交渉のなかで、私は日本がアメリカに勝ったケースを一つも知らない。だから、参戦要請を断ることなどできないと思う。いままで断れたのは、集団的自衛権の行使ができないという歯止めがあったからだ。それを失えば、もう参戦を断る口実がなくなってしまう。
もう一つの理由は、もともと、戦後レジーム転換派は、アメリカの参戦要請を断る気などないということだ。彼らのやりたいことは、反中だ。日本の2倍以上の軍事費を持つ中国を抑え込もうと思ったら、どうしても米軍の力添えが必要になる。だから、アメリカに逆らうことなど考えられないのだ。
もちろん、中国を軍事力で抑え込もうなどということは、妄想にすぎない。そうした考え方自体が戦争を誘発する。
日本の平和を守るために必要なことは、まず、戦争にならないように近隣諸国と良好な関係を保つ外交努力の地道な積み重ねであり、それ以上に大切なのは、戦争の悲惨さを伝え続け、ユーフォリアに陥っている国民に「分かりやすい主戦論」がいかに危険かを説き続けることだろう。

