・ガチでフリーズ
あまりの衝撃に言葉を失う私。ふと顔を上げると、なぜか中澤も言葉を失っている。アンタが作ったんだろ。
そう、まさかの熊の手である。中華料理における満漢全席の一つとしても知られる高級食材の、あの熊の手である。本物……だと……?
中澤によれば、このツキノワグマの熊の手は、千葉県君津市でジビエショップ兼レストランを運営している猟師の仲村さんから入手したものだという。
仲村さんは、環境省に認定を受けた有害鳥獣捕獲等事業者『株式会社TSJ』の代表取締役であり、取り扱っている食品・加工品などはすべて害獣駆除によるものなんだとか。
気になるお値段は8600円。さすがに高額だが、これでも安くしてくれたらしい。素人には難しい毛の処理なども仲村さんがやってくれたそうだ。ありがとうございます。
とはいえ、未知の食材であることに変わりはない。中までしっかり火を通すため、中澤は私が来る前日にまず3時間ほど煮込んでみたそうだ。
味付けは醤油、みりん、かつおぶしと生しょうが。さらに今朝は7時から煮込み始め、その結果、11時半くらいに指が取れたという。これは本当に料理の話なのか?
仲村さんも処理段階で圧力鍋を使って煮込んだとのことで、熊の手の調理がいかに時間と手間が掛かるかが分かる。
こうして完成したのが、いま我々の目の前にある皿というわけだ。こんな希少食材をスーツケースの上で食べるのか? という疑問もあるにはあるが、とりあえず……。
かんぱーーーーい!
・熊の手の食べ方
しかし、ここでいきなり難問にぶち当たる。熊の手ってどうやって食べればいいんだろう?
ネットで調べてみたところ、指の間にナイフを入れれば簡単に切り分けられるとのこと。言われた通り、恐る恐るナイフを入れてみると……。
うわァァァァアアアアアアア!!!
おいマジかーーーーーーー!!!!
本当に切れた。
つい先ほどまで “手そのもの” だったが、カットすることで肉料理っぽさが増す。雰囲気は豚足に近いかもしれない。それでは人生初の最高級ジビエをいただいてみましょうか。
ガブリ。
