「すみません、食べ放題は2名からなんです〜」
──何度聞いても切ないセリフである。自分が “ぼっち” であるという現実をまざまざと突きつけられて、その場から消えたくなってしまう人も多いのではないか。
実際に私は今まで200回くらい聞いているが、そのセリフを店員さんから言われているときはどうしても周りの目が気になってしまう。
「あの人、1人なのに食べ放題をオーダーしようとしていたの?」と思われているんじゃないかという風に。
だがあるとき、切なさに耐えかねてヤケクソで高級肉をオーダーしたら考え方が変わった。どういうことかというと……
・他の人も言われている
当然ながら、1人でも食べ放題を楽しめるのか、あるいは2名からなのかあるいは3名からなのかを入店前に把握しているのがベスト。だが、そのあたりのことがイマイチ分からないことは珍しくない。
店の前に出ている看板に書かれていることといったら、食べ放題の対象メニューの一部と制限時間、価格くらいだったりする。スペースの問題上食べ放題の細かいルールまでは書き切れないから、仕方ないのだ。
そうなると、店の中に入ってから「すみません、食べ放題は2名からなんです〜」という展開になるわけだが、あなたが言われているということは同じように言われているお客さんが何人もいる。
みんな同じ看板を見て入ってきているのだから。よって、そのセリフを聞いて恥ずかしさや切なさを感じる必要は一切ない。
そして同時に思い出して欲しいのは、あなたは今、食べ放題をオーダーしようとするほど空腹だということ。
食べ放題がダメになったことで、自分の胃袋を十分に満たす手段を失ったと思っているかもしれないが、空腹こそ最高の調味料という事実は何も変わらない。
つまり、「食べ放題は2名からです」と言われたときのあなたは肉の旨味を最大限に味わえる状態にあるのだ。
もっと言うならば、旨味の塊である高級肉を楽しむ絶好期がまさに到来しているとも言える。
・歌舞伎町の焼肉店で
具体的な例を挙げよう。私は先日、新宿・歌舞伎町で「ホルモン焼肉 道楽」という焼肉店に入った。
目的はもちろん食べ放題。すると、店員さんが申し訳なさそうに「すみません……」と例のセリフ。
仕方がない。私は「ちょっと考えますね。とりあえず生中で」とだけ伝えてページをめくると……
神戸牛があるじゃないか。4種盛りセットで1万4278円!! 食べ放題(スタンダード)が4378円だから、1皿で食べ放題より高い。
しかしながら、神戸牛のところをよくよく見ると神戸牛特選カルビ(2178円)や神戸牛特上ロース(2838円)のようなメニューも。これらなら食べ放題よりも安く済む。
いま私の心に生まれた大きな隙間を埋めるのは神戸牛しかない……という気持ちになっていたこともあり、特上ロース(2838円)をオーダー。
出てきたそれは、あまりにも美しい姿をしていた。
ビジュアルだけで、心の穴が塞がっていく。
そして当たり前だが、食べるとめちゃくちゃ美味い。
なんというか、これほどワサビが合う肉はないという印象。文字通りトロトロ。肉というより。マグロのトロに近いレベル。
言い換えれば、脂がすごい。噛むとジュワと溢れ出てくる。だから一皿食べ終えたときには、かなりの満足感がある。
まぁ、ボリュームという点では食べ放題に遠く及ばないだろうが、神戸牛の一皿はそれを補って余りあるほど旨味のパンチが強い。
もちろん、そう感じたのは私が食べ放題をオーダーしようとするほど空腹だったからなのが大きいだろう。
毎日のように神戸牛を楽しめるほどの財力があるお金持ちよりも、今この瞬間だけは私の方が神戸牛の旨さを堪能できている……と言ったら負け惜しみが過ぎるだろうか。
