スペインを代表する建築家、ガウディと、日本を代表するクリエイティブカンパニー NAKEDが、時空を超えてコラボ……そんなスペクタクルなイベントが開催されています。「ガウディ没後100年公式事業 NAKED meets ガウディ展」は3月まで東京の天王洲アイルの寺田倉庫で開催され、春には大阪に巡回予定。ガウディ没後100年とサグラダ・ファミリアのメイン「イエスの塔」完成に合わせた展示とのこと。内覧会にはNAKEDが公式ライセンス契約を締結したというガウディ財団のカルロス・カナルス・ルーラ会長も来場し、財団側もかなり気合が入っています。
ちょうど個人的に昨年10月にサグラダ・ファミリアを見てきたので、その感動の余韻が残る中、展示を拝見。実際のサグラダ・ファミリアは荘厳で神への敬虔な愛と賛美にあふれた空間でした。ステンドグラスがとにかく美しく、心身が浄化された思い出です。
▲実際のサグラダ・ファミリア
でも、キリスト教の側面から展示を企画しても、現地の感動には叶いません。今回の展示は、ガウディの創作の源泉や手法、さらには筆跡などに着目していたのが斬新でした。
展示室に入ってまず目に入ったのは、有機的な形状の塔の先端の模型。サグラダ・ファミリアやガサ・パトリョ、グエル公園などガウディ建築の塔の先端は、小麦の穂やニンニク、糸杉、キノコなど自然の造形を模していました。自然に囲まれて育ったガウディは自然を師とし、造形センスを育んでいたようです。
ガウディはバルセロナ大学建築学部で学びました。才能が先走りすぎていて、学長に「この学位を狂人に与えたのか、天才に与えたのか、 私には分かりません・・・ 時が経てば分かるでしょう」と評されたのも今となっては武勇伝です。
若い頃から次々と独創的な建築を手がけていたガウディ。ゴシック様式を「再発明」し、伝統と革新を融合させた作品を生み出しました。有機的な造形や、光を取り入れるテクニック、吊り下げたロープを逆転させたデザインなど、他では見られない手法です。展示スペースには、実際にガウディの構造哲学を体験できるコーナーもありました。フレームに張った直線のひもを曲げることで双極放物線になるなど、直線から曲線を作る方法を再現できます。
ロープを垂らしてみてアーチを作り、それを上下逆にすると建物の構造になる、という手法も映像とオブジェの両方で体験できました。ガウディは建築デザインを考えるとき、鉛筆ではなく重力を用いることがあったそうです。「ポリフニキュラー模型」という方法で、天井から紐を垂らし、おもりをつけて美しい曲線を作り出しました。難しい数式や図面はわかりませんが、触ってみる展示が多いので、ガウディがやりたかったことが感覚的に伝わり、ガウディ建築の敷居が少し下がった気がします。
NAKEDならではの、インタラクティブなしかけや没入型の展示も。壁に投影されたガウディ建築のビジュアルに触れると、一瞬で色がつき、街の人々が動き出します。グエル公園の有名なトカゲのモザイクに好きな色を塗れるプロジェクションマッピングも楽しいです。
曲線的で生命体のような椅子やドアも、自由に触れるようになっていました。ガウディについての展示でここまで体験が豊富なのは他にないので、入場料も納得できます。
ガウディの手記や直筆の書簡、スケッチなど、未公開だった貴重な資料も展示。なんと筆跡診断まで添えられていました。筆跡心理学の専門家の鑑定によると、「彼の筆跡は、動き、 独創性、そして強迫観念的な創造への欲求で震えています」とのこと。例えば「ガウディの小文字『d』は、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アインシュタイン、マリー・キュリー、ピカソ、そしてダリの作品にも見られる特徴的な形状で、大きく後方に傾いた上部のループが特徴」で、独創性が表れているそうです。確かにdの小文字にしては不必要なループが上部にありますが、天才に共通する筆跡なのでしょうか。また「羽根のように高く伸びた『t』の文字は、鮮やかな想像力と白昼夢の習慣を明らかにしています」とのこと。芸術的な筆跡です。「文字『a』の開いた楕円形は、神秘、温かさ、社会的な思いやりを表現しています」と、霊格の高さも漂っています。直筆のノートも展示されていて、美しい流麗な筆跡から創造の息吹を感じます。
そして展示の各所には「人間の創造物は神の創造物を超えてはならない」「物事をうまくやるには、まず愛、 そして技術が必要です」といった、波動の高いガウディの名言が掲げられていて、崇高な精神が伝わってきました。ガウディはやはり神に選ばれた天才だと改めて実感。そんなガウディをこれまでにない多彩な視点で解き明かそうとするNAKEDの野心的な試みにも驚かされます。
展示の後半には、壁に投影されたプロジェクションマッピングで、サグラダ・ファミリアができるまでの時間の流れを体感できる没入型作品もありました。美しい映像に包まれ、ステンドグラスの光も疑似体験。今、ユーロは高騰し続け、飛行機のルートは遠く直行便はなし、2026年後半からはEUはビザが必要になります。主要な塔が完成する2026年は現地はさらに混雑することでしょう。そして現地に行ってわかったのですが、周辺はスリが多いです。現実のサグラダ・ファミリアが遠くなっていきますが、この展示では近くて安全で快適な環境でガウディのクリエイティビティに触れることができました。
ガウディ没後100年公式事業 NAKED meets ガウディ展
開催日程
【東京】2026/1/10(土)~3/15(日)
平日10:00~18:00(17:00最終入場)
土日・祝日10:00~20:00(19:00最終入場)
【大阪】2026年春 開催予定
(執筆者: 辛酸なめ子)
