
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)が誇る「アベンジャーズ」シリーズの最新作映画「アベンジャーズ/ドゥームズデイ」の劇場公開まで1年を切り、MCUや洋画ファン界隈が早くもざわつき始めている。2025年末よりMCUの人気キャラクターが登場する新たな予告や情報が続々と発表され、2026年になると「アベンジャーズ」アンバサダーに俳優の山田裕貴が決定。2019年に公開された前作「アベンジャーズ/エンドゲーム」が、2026年9月に映画館でリバイバル上映されることが決まるなど、“真打”登場を前に盛り上がりを見せている。
しかし、直近の作品の公開が7年前だけに、もしかすると初めて「アベンジャーズ」に触れるという人もいるかもしれない。そこで今回は「アベンジャーズ/ドゥームズデイ」にてヴィラン役で復帰することになり、世界中に衝撃を与えたロバート・ダウニー・Jr.が主人公を演じたMCU映画第1作「アイアンマン」(2008年)が打ち立てた金字塔は、果たして何だったのか。そのいくつかを解説しよう。(以下、ネタバレを含みます)
■神に選ばれし存在ではなく、ヒーローの道を選択した“アイアンマン”
映画「アイアンマン」は、主人公が世界屈指の企業家であり、天才発明家であるトニー・スターク(ダウニー・Jr.)だったことにより従来のヒーロー映画とは一線を画す作品となった。トニーは、父のハワード・スタークから引き継いだ巨大企業「スターク・インダストリーズ」で軍事兵器を製造していたためにアフガニスタンで拉致され、さらなる兵器開発を強いられたことから、逃げるために洞窟内の粗末なラボでパワードスーツの製造に取り掛かる。異色の正義のヒーロー“アイアンマン”は、これをきっかけに誕生するのだ。
ただ、アイアンマンは正義のヒーローらしからぬヒーローだった。天才発明家で億万長者であるトニーは、傲慢で皮肉屋の自信家。能力と権力があるゆえに自分勝手で、従来の正義のヒーローと異なり、とても人格者とは言えない人物だ。身体的にもスーパーパワーを持っていたわけではなく、普通の人間なのだが、テクノロジーの力を借りて自らヒーローへの道を選択。自らの意思で正体を明かしたヒーローになるという選択は、後続するヒーローたちに受け継がれていくことになる。
■生きるために寄せ集めで作った初号機が生み出すリアリティー
次に特筆すべきは、最先端技術を駆使し、失敗を繰り返しながらスーツを作り上げていくため、現実の延長線上にあり得る話に感じさせてくれる点だ。アイアンマンのパワードスーツ、通称“アーマー”の初号機は、寄せ集めの素材で作ったお粗末なものだった。
見た目はツギハギだらけの鉄の塊で、腰の辺りには熱を放射するためのファンが丸見え。銃弾を跳ね返すことはできても攻撃手段は主に火炎放射器で、飛行するというよりは高くジャンプできるといったところ。そのため簡単に落下してしまい、砂漠の真ん中で粉砕してしまった。
今回の経験を経て、兵器製造から撤退する決意を固めたトニーは、人命を守るためのアーマー研究に没頭する。トニーの胸には、拉致された際に負った大けがからトニーを救うために同様に拘束されていた科学者が埋め込んだ電磁石を利用したエネルギー源“アーク・リアクター”があったので、アーマーとあわせて改良。トライ&エラーを繰り返し、誰もが知るあのキャンディーレッドとゴールドの形態へと進化していく。
アーク・リアクターの辺りからは完全にファンタジーだが、初号機の粗末さと巧みなVFXが工学的なリアリティーを生み出している。

■MCUと「アベンジャーズ」シリーズの始まり
人格者でもなく、スーパーパワーも持たないセレブ発明家が、試行錯誤を繰り返して最先端のテクノロジーを駆使したアーマーを製造し、自らの意思で正体を明かしたヒーローになる。この従来の正義のヒーロー像を完全に無視したのが「アイアンマン」であり、だからこそ“正義のヒーロー界”の新潮流となり得たのだろう。欠点とユーモアを持つ主人公像はその後も広がりを見せ、MCU作品の大きな魅力となっている。
また、それまで余談的存在だった、エンドクレジット後のポストクレジットシーンに次の作品につながる情報を入れたのもMCU作品の大きな特徴。映画が大好きで「映画館にいるという体験を終わらせたくなかった」という、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長の思いから始まった。
記念すべき一作目「アイアンマン」のポストクレジットシーンには、ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が登場。まるで「アベンジャーズ」シリーズの“開幕宣言”のような1シーンになっており、「アベンジャーズ」イヤーの今あらためて見ると、よりエモく感じられるだろう。
「アイアンマン」はディズニープラスにて見放題独占配信中、「アベンジャーズ」などMCU過去作も配信中だ。
◆文=及川静

