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「如月千早は、実在した」 アイマス20周年・千早武道館単独公演で見えた“イマーシブライブ”の極致と、彼女が歌う意味 <連載:アニメノミライ・ねとらぼ支店>

「如月千早は、実在した」 アイマス20周年・千早武道館単独公演で見えた“イマーシブライブ”の極致と、彼女が歌う意味 <連載:アニメノミライ・ねとらぼ支店>

伝説となった「約束」、そして20年の歳月

 そして、筆者の心が完全に“実存”を受け入れた瞬間。それがライブのハイライトとなった『約束』でした。テレビアニメ『アイドルマスター』第20話で、歌えなくなった千早を仲間たちが支え、再び歌う力を取り戻すきっかけとなった楽曲です。

 『アイマス』と私たちの20年は、決して平坦な道のりではありませんでした。テレビアニメの放送年に起こった2011年の東日本大震災をはじめとする大災害、そして近年のコロナ禍……。この場に本当は集いたかったはずだけど、もういない――そんな人々も少なくありません。わたしたちが現実世界で味わった困難や、声優陣が経験した苦悩さえも、歌を通じてキャラクターの物語とシンクロし、深みが与えられていきました。

 特に、2014年の9周年ライブで声優の今井麻美さんが感極まって歌えなくなった際、他のメンバーや観客が歌って支えたエピソードは、アニメの再現のようだと語り継がれています。今回の武道館での『約束』は、そうした「現実の歴史」と「アニメの物語」が完全に融合し、昇華された瞬間でした。

 その物語を支えたのが千早の周りを動く「groovots」たちの存在です。無機質なロボットのはずですが、そのLEDが放つ光の色は、明らかに春香の赤や美希の緑など、765プロの仲間たちを想起させるものでした。

 物理的には「一人」でのステージのはずなのに「彼女は一人ではない」ことがヒシヒシと伝わってきました。振り返れば仲間がいる――そんな空間が、テクノロジーによって可視化されていたのです。

 完璧な演出プログラムだけでなく、トラブルも起こり得るロボットの存在が加わったことにより、「何が起こるかわからない」ライブの緊張感も含めて、この空間には「温度」がありました。エンドロールで、演者としての千早だけでなく、彼女を支えたロボットたちにも大きな拍手と歓声が送られたことは、このライブが技術展示会ではなく、温かいエンターテインメントであったことを象徴していました。

彼女がそこに「立つ」意味

 このライブ体験は、「如月千早が武道館に立った」という事実を祝い、そして「自分たちがその場に立ち会えた」ことを祝う、壮大な祝祭だったといえます。

 イマーシブ技術は、単にリアルな映像を見せるためのものではありません。観客一人一人が抱く「如月千早」への想い、20年間の思い出、それらすべてを引き出し、目の前の現象とリンクさせるための触媒として機能していました。

 私たちは、ただの観客ではなく、彼女の物語の一部となる喜びを噛み締めていたのです。

    「歌うことが好きだから」

 かつてそう気づいた彼女が、歌姫のひとつの到達点である「武道館単独公演」という夢の舞台に、今「立っている」。その事実は、20年間彼女を支え、また彼女に支えられてきた私たちにとって、何よりも代えがたい「答え」だったと言えるでしょう。

 テクノロジーの進化と、積み重ねた歴史。この2つが合わさったとき、エンターテインメントはここまで人の心を震わせることができる。『アイマス』と如月千早が見せてくれた「Oath ONE」は、これからの音楽、そしてキャラクターコンテンツの未来に、確かな可能性を示すものでした。

配信元: ねとらぼ

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