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エジソンの「竹を使った電球」からグラフェンが生成できることが示された

エジソンの「竹を使った電球」からグラフェンが生成できることが示された

エジソンの「竹を使った電球」からグラフェンが生成できることが示された
エジソンの「竹を使った電球」からグラフェンが生成できることが示された / Credit:Rice researchers replicating Edison’s 1879 light bulb experiments show graphene may have been unintentional by-product

1879年、トーマス・エジソンが世界で初めて商業的に成功したとされる実用的な電球を灯しました。

しかしこの白熱電球、光を生み出すだけの装置ではなかったかもしれません。

アメリカのライス大学(Rice University)で行われた研究によって、エジソンの電球実験を再現したところ、竹由来の炭素フィラメントに110ボルトの電圧を20秒間加えるだけで、フィラメント表面の炭素がグラフェンへと構造転換していることが示されました。

この発見により、2000年代に登場したと思われていたノーベル賞級の新素材が、実はエジソンの時代にも偶然生み出されていた可能性が示されました。

もしそうだとすれば、私たちが「夢のナノ素材」として教科書で学ぶずっと前から、エジソンの研究所では日本の竹を使った電球の中でグラフェンがひっそりと生まれていたことになります。

エジソンの白熱電球は、本当にグラフェンを生み出す隠れた工場だったのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年1月6日に『ACS Nano』にて発表されました。

目次

  • 古い白熱電球と最新グラフェン炉の意外な共通点
  • エジソンの電球が実はグラフェン炉として機能していた
  • 電球だけでなく真空管などの骨董装置も特殊材料を生んでいた可能性がある

古い白熱電球と最新グラフェン炉の意外な共通点

古い白熱電球と最新グラフェン炉の意外な共通点
古い白熱電球と最新グラフェン炉の意外な共通点 / Credit:Evidence for Graphene Formation in Thomas Edison’s 1879 Carbon Filament Experiments

白熱電球のスイッチを入れると、フィラメントがオレンジ色に光り、やがて切れてしまう――そんな「古い照明」のイメージを、多くの人が共有していると思います。

トーマス・エジソンは1879年に長時間安定して光り続ける白熱電球を発明しました。

当時の電球は現在のものと異なり、フィラメント(細い発熱体)に炭素素材が使われていました。

たとえば京都八幡産の竹を炭化させたフィラメントなどが利用され、真空中で白熱させることで最大約1200時間連続で点灯できる電球が実現したのです。

LEDや有機ELが主役になった現代では、白熱電球は少しレトロな雑貨という位置づけかもしれません。

コラム:エジソンと日本の竹

1879年エジソンが作成した「電球」は、綿糸を炭にしたフィラメントを使った炭素電球で炭化した綿の糸が約13〜14時間ほど光り続けたと報告されています。しかし、家庭や工場で本格的に使うには、十数時間ではまだ足りません。エジソンのチームは「もっと長寿命で、しかも作りやすいフィラメント」を求めて、世界中の植物や素材を炭にしては試すという、気の遠くなるような実験を繰り返しました。その旅路の果てにたどり着いたのが、日本・京都の八幡で採れた竹でした。

ここで採れる「八幡竹」は、繊維がぎゅっと詰まっていて、しなやかで折れにくく、炭にしても形が保たれやすいという特徴があります。実際に炭化した八幡竹のフィラメントは、なんと約1200時間、連続で光を出し続けたと紹介されています。こうして「日本の竹フィラメント電球」は、タングステンなどの金属フィラメントが登場するまでの約10年間、世界中の家庭や職場を照らす主力として使われることになりました。

一方、21世紀においては同じ炭素を材料にした「グラフェン(原子1枚ぶんの薄さの炭素シート)」という素材が、強くて軽くて電気もよく流れる“奇跡の素材”として注目されています。

グラフェンは1960年代にその性質が実験的に報告され、2004年にテープではがす実験で単層が取り出され、2010年にはノーベル物理学賞にもつながっています。

では、そのグラフェンがどのように作られるかというと、代表的な方法のひとつが「フラッシュ・ジュール加熱(Flash Joule Heating)」です。

これは炭素を含む粉末などに一気に電流を流し、2000〜3000度という超高温に瞬間的に持ち上げて、炭素の並びを組み替えてしまう技術です。

ここで研究者たちはあることに気づきました。

エジソンのカーボンフィラメント電球も、竹を炭にした糸に電圧をかけて1800〜2300度という高温まで一気に加熱する装置だったのです。

つまり「古い白熱電球」と「最新のグラフェン炉」は、実はかなり似た条件で動いていた可能性があります。

そこで今回の研究者たちは、「エジソン式電球をそのままフラッシュ・ジュール加熱装置だと思って再現したら、本当にグラフェンができるのか」を確かめることにしました。

もしそれが本当なら、19世紀の電球の中で、最新ナノ材料がひっそり生まれていたことになるのでしょうか。

エジソンの電球が実はグラフェン炉として機能していた

エジソンの電球が実はグラフェン炉として機能していた
エジソンの電球が実はグラフェン炉として機能していた / Credit:Canva

本当に、ただの白熱電球がグラフェンを焼く「小さな炉」になり得るのでしょうか。

この謎に答えるために、研究者たちはまずエジソンの特許に書かれた条件にできるだけ近い炭素フィラメント電球を手に入れました。

フィラメントは日本産竹を炭にしたもので、太さはおよそ170マイクロメートル、そして中はしっかり真空に保たれています。

次に、この電球をプログラム可能な電源装置につなぎ、エジソンと同じ110ボルトの直流電圧を20秒だけかけました。

その間、フィラメントの温度は約2173度で安定していたと見積もられています。

さらにガラス球を割ってフィラメントを取り出し、光学顕微鏡で見てみると、もともと暗い灰色だった表面が、「光る銀糸」のようにツヤのある銀色へと変わっていました。

ここまでは肉眼や普通の顕微鏡で見える変化ですが、肝心なのは原子レベルで何が起きているかです。

そこで研究者たちはレーザー光を当てて、物質がどのように「ふるえるか(振動するか)」を調べることで、その構造を確かめる方法(ラマン分光)を使いました。

結果、加熱前の炭素フィラメントではグラフェンの特徴は見られませんでしたが、加熱後には一般に「グラフェンができた」と判断する目安を大きく超えた数値が得られました。

研究チームは透過型電子顕微鏡(TEM:電子を透かして原子レベルの構造を見る顕微鏡)でもフィラメントの断面を観察しました。

すると加熱前は、炭素が不規則だったものが加熱後には、薄いシート状の層が何枚も重なったような構造が現れ、その層同士の間隔は0.345ナノメートルと測定されました。

これはフラッシュ・ジュール加熱で作られたターボストラティック・グラフェンとほぼ同じ値であり、電子線回折のパターンも「グラフェンらしい」点模様へと変わっていました。

ラマン分光という「物質の声」と、電子顕微鏡という「物質の姿」がそろって示しているのは、「110ボルト20秒のエジソン風フラッシュ」を浴びた竹由来の炭素フィラメントが、グラフェンを含む構造へと変わったということが強く示されています。

研究者たちはこの結果から、「エジソンスタイルの電球は、実はフラッシュ・ジュール加熱と同じ条件で動いており、当時の実験でも同じようなグラフェンが一瞬だけ作られていた可能性が高い」と結論づけています。

配信元: ナゾロジー

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