朗報は朗報だろう。年間の映画興収が歴代最高記録を樹立した。興収2774億5000万円は、これまでの最高だった2019年の2611億8000万円を超える。快挙であるが、喜んでばかりもいられない。いくつかの問題点が見えてきた。
邦画が強すぎるのだ。興収シェアでは邦画の75.6%に対し、洋画は24.4%である。これは前年とあまり変わらない。つまり、よく言われる洋画低迷が、完全定着してしまったことになる。
実はこの正月興行では、ディズニーアニメの「ズートピア2」が大ヒットした。最終では興収150億円を超えそうで、達成できれば作品別興収の洋画歴代6位につける。
昨年実績はともかく、これは洋画復活の兆しとの見方が出てもいいのだが、そうはならない。なぜか。慢性的な洋画低迷からは、なかなか抜け出すことはできないと、多くの映画関係者が感じているからにほかならない。
「ズートピア2」1本では動かない現実がある。洋画の実写作品が、なかなか数字を上げることができないからだ。シリーズものも一部の強力な作品を除き、目標を超えられないことが増えている。
なぜか。洋画の実写作品を面白がる観客、中でも若い観客が減っているのだ。日本の映画市場では、特にその傾向が強い。
昨年を見ると、洋画の実写作品で興収10億円を超えたのは9本。上位にはシリーズものやファンタジー大作が並ぶが、それ以外の単独の「ジャンル映画」は「F1/エフワン」と「教皇選挙」のみだ。
邦画が強すぎると言ったが、これはアニメのヒットが頭抜けていることが大きい。昨年は「国宝」があったから、実写作品も健闘したように見えるが、実態はそうではない。
単純に言ってしまうと、洋画も似たようになっていくのではないか。たとえ数字が上がったとしても、それはアニメの貢献ということになる。
別にそれでいいではないかと、多くの人は思うかもしれない。今は実写だ、アニメだと「区別」する時代じゃない。そのような言葉が聞こえてきそうだ。
それも一理あるが、そのような事態が加速していくと、映画界はじり貧になる。「映画」の意味は広い。ひとつの固定したジャンル、形態の作品が市場を占拠していくと、数は多くとも、偏った客層が中心的になる。そうなると、そこから離れていく層が出てくるのである。
よく使われる「多様性」という言葉は、言うは易く行うは難し、と言っていい。理論、理想と現実のギャップである。映画もすでに、その難しい舵取りを強いられている。
いささか安易に使われている感のある「多様性」とは、実に奥の深い言葉である。体のいい流行りだけで済まされる言葉ではない。言うだけでは、それは達成などできないのだ。
コロナ禍以降、ある意味、順調な実績を上げてきた映画界だが、記録更新の中身には様々な問題が含まれている。今回、その一端を挙げてみた。
(大高宏雄)
映画ジャーナリスト。毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。「アメリカ映画に明日はあるか」(ハモニカブックス)、「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2025年に34回目を迎えた。

