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〈いのちの電話〉給料ゼロ、1年の自腹研修、一方的な怒りを浴びせられる…それでも電話を受け続ける相談員たちの覚悟「心に“あたたかいもの”が残った」

〈いのちの電話〉給料ゼロ、1年の自腹研修、一方的な怒りを浴びせられる…それでも電話を受け続ける相談員たちの覚悟「心に“あたたかいもの”が残った」

「一方的な怒りをぶつけられることも普通にあります」60代の新人相談員が学んだこと

続いて話を聞いたのは、昨年の4月に相談員の認定を受けた相談員歴1年目のYさん(60代・男性・無職)。

Yさんは定年まで一般企業のサラリーマンとして働き、これまで仕事一筋で生きてきたという。

「65歳の定年まで勤めた会社をリタイアした時に、“これからの人生をどう生きるか”と考え始めました。ずっと仕事一筋で、自分が何をやりたいか明確ではなかったんです。かと言ってなにもしないのも“虚無感”のようなものも抱いてしまいそうだったので、なにか社会とのつながりは持ち続けたいと思っていました。

いろいろ考えた結果、今後の人生は自分のためよりも、誰かの力になりたいと考え、相談員を目指すことにしたんです。

あとは、会社員時代にメンタルをやられて退職してしまった人たちを見てきて、その時は仕事に必死で、助けてあげられなかったという後ろめたい思いもあり、いまからでもそういった人たちの助けになれたらなと思ったんです」(Yさん)

現在は年金生活だというYさんは、相談員を目指すにあたり家族を説得したそう。

「研修費はけっして安いとは言えない金額でしたし、これまでボランティア活動になじみがなかったですが、妻を説得して挑戦することになりました」(Yさん)

研修をしていく中でYさんは、ある意外なことを学んだそうだ。

「相談員は、相手の気持ちを考えることが第一だと思っていたんですが、研修では真逆の事を教わりました。まず“自分の気持ちに気づくこと”が大切だと言われ、これが自分の中ですごく新鮮で、心に残りました。

サラリーマン人生の中で、私はこれまで自分の気持ちを押し殺したり、排除したりすることばかりで、自分の気持ちに向き合ったことがあまりなかったと、振り返って気づいたんです」(Yさん)

相談員1年目のYさんだが、これまでの相談では激しいことを言われることもあったという。

「厳しいお怒りの電話も普通にあります。第一声から怒りをあらわにする方も珍しくありません。自分が会社員時代なら激しくぶつかってしまっていたでしょうけど、相談員を始めてからは、その人がいまなぜこんなにも怒っているのか、その背景にある複雑な心境を読み解くことを意識しています。

ここ(いのちの電話)に電話するまでに、相談者の方はきっとたくさんのつらいことを経験しており、怒りや不満の感情の裏には非常に複数の要因が重なって電話してきてくださっている方が多いと感じます」(Yさん)

Fさんは内容の重い相談や激しい怒りの電話が続くと、相談員同士で支え合いながら、自分の気持ちを“負”の方向に持って行かれないこともまた大事なことのようだ。

「とりあえず今はこの活動を続けていくことが目標です。相談員を始めたからこそ、この年齢で学ぶことも多いので。本当に貴重な機会だと感じています」(Yさん)

20代・30代の相談員、はじめたきっかけは?

最後に、東京いのちの電話の事務局長・郡山さんに話を聞いた。

相談員の平均年齢は60代で、応募者では50代後半が最も多いんだとか。一方、20代や30代の応募者、相談員も少数ながらいるという。

「若い方で相談員になりたいという方々は、例えばいじめによる事故や事件など、なにか世間的にショッキングな出来事があったときに、それをきっかけに始める方もいらっしゃいますね。あとは身近な知人や家族などが自死などでお亡くなりになってしまった経験を持つ方もいると思います」(郡山さん)

また郡山さんによると、20代や30代の相談員は転勤や結婚など、仕事やライフステージの変化が起こりやすい年代であることから、相談員を続けていくことが難しく、辞めてしまうケースが多いという。

現在いのちの電話の相談員は全国的に不足しており、運営すること自体が難しくなっている地域もあると危惧する郡山さん。相談員に少しでも興味のある方は以下の情報を参考にしていただきたい。

募集期間:2026年2月1日~4月30日
詳しくは事務局までお問い合わせください
HP:https://indt.jp
問い合わせ先:社会福祉法人いのちの電話(東京)事務局 
TEL:03-3263-5794
営業時間:月曜~金曜 13:00~17:00

――日々、誰かの命をつなぎ留め、デリケートな人々に向き合い続ける「いのちの電話」の相談員たち。厳しい環境のなかでも続けるのには、目の前で話しているひとりひとりに縁を感じ、力になりたいという相談員たちの純粋な思いがあった。

取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio)

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