
山本彩が1月28日と29日の2日間にわたり、東京・LINE CUBE SHIBUYAにて全国ツアー「Sayaka Yamamoto Hall Tour 2025-26 “home away from home”」を締めくくる東京公演を行った。
■全国3会場6公演のホールツアーを完走
本ツアーは、神奈川芸術劇場、大阪・オリックス劇場、LINE CUBE SHIBUYAの3会場、各会場2デイズの計6公演が行われた。セットリストは新旧を織り交ぜた全19曲で、全会場2日間のセットリストを入れ替えるという山本にとって初の試みも用意されていた。
開演時間となり、会場はブルースモークに包まれ、静かなざわめきの中、トライアングルがひとつ、空気を切る。そして山本が姿を現し、「ヒトコト」でライブがスタート。派手なイントロも強い煽りもない。静かなピアノに導かれるように、ギターを持たずステージを歩きながら、観客と視線を交わし、言葉をそっと置いていく。
「ヒトコト」は、山本がソロライブをスタートさせた「山本彩 LIVE TOUR 2016 〜Rainbow〜」でもオープニングを飾った曲。10年の時間を経て、再びこの曲から始まったこの夜は、外に向かって叫ぶのではなく、内側へと深く潜っていくライブであることを静かに示していた。
続く「君とフィルムカメラ」では、夕陽のような照明とブルーが交錯する。アコースティックギターを抱え、日常の風景をなぞるように歌われるその音が、会場を一気に山本の描く時間の流れへと引き込んでいった。29日は「yonder」を披露。
■「ちょっと間が空きすぎて、気持ちはもう初日です(笑)」
ライブはそのまま「刹夏」へ。夏をイメージして書かれたこの曲では、入道雲のような照明が立ち上がり、ストリングスの旋律がきらりと光を放つ。軽快なバンドアレンジの中に、解放感とノスタルジアが同時に息づき、ドラム、ギター、ベースに重なるストリングスが、一瞬で過ぎ去る季節の輪郭を鮮やかに描き出していく。
3曲を歌い終えて、ここで最初のMC。「こんばんは、山本彩です。『“home away from home”ツアー』ありがとうございます。新年一発目ということで、あけましておめでとうございます」とあいさつ。大阪公演から約1カ月ぶりのステージということで「ちょっと間が空きすぎて、気持ちはもう初日です(笑)」と心境を語り、「今日は“home away from home”ツアーなので、みんなで家族みたいに一つになれたらと思います」と伝えた。
「ラメント」で描き出された壮大な世界観を経て、ライブはそこから一気に表情を変える。ドラムの鋭いイントロを合図に、ベースがうねり、ワウを効かせたギターが空気を切り裂く。アコースティックギターに山本の歌声、そこへバイオリンの旋律が重なり合い、ステージは赤い照明に染め上げられていく。
披露されたのは「劣等感」だった。「劣等感」は、山本の楽曲群の中でも、自己認識のリアルな感情をそのまま直球で描いた1曲。自分を飾らない言葉と歌が、フロアの感情をまっすぐに引き寄せていき、気づけば会場には大きな一体感が生まれていた。

■無観客ライブを行なって以来、5年ぶりのLINE CUBE SHIBUYAでの公演
続いて、山本はエレキギターに持ち替えて「イチリンソウ」を歌い始めた。ソロとして歩み始めたことを象徴するこの曲では、強く踏み鳴らすのではなく、静かな決意を胸に前へ進むような歌声が、ホールいっぱいに広がる。バンドも必要以上に感情を煽ることなく、一輪の花がそこに立っている、そんな佇まいを音そのもので描き出した。
ここで、2度目のMC。「楽しんでくれてるんだろうなっていう声が、イヤモニ越しにすごく届いてます。本当にありがとうございます」と感謝。LINE CUBE SHIBUYAでのライブは約5年ぶりで、前回は無観客でのライブだった。
山本が「誰もいない景色を見ながら、配信でライブをしていました。あの時は、それがいっぱいのライブだったなって。振り返ると、5年って本当にあっという間ですね」としみじみ語ると、客席から「おかえり」の声が。
それに「ただいま」と答えた山本は「“home away from home”ツアーということで、今日はみんながおうちに帰ってきたみたいに、くつろいで、はしゃげる最高の一夜にしたいと思います」と呼びかけ、「後半戦、行っちゃっていいですか?」という声と共に後半戦へ。
■「Seagull」「Are you ready!?」など疾走感のある楽曲を畳み掛ける
「Seagull」では、アコースティックギターを手に、ピアノとバイオリンに包まれながら歌い始める。ステージは茶色の紅葉を思わせる照明に染まり、サビでは青い星が瞬くように光が広がっていった。続く「JOKER」ではエレキギターに持ち替え、イントロ定番のバイオリンフレーズに合わせて、人差し指が一斉に掲げられる。疾走感のあるビートが手拍子を加速させ、幾重にも重なるブルーの照明の中、会場は一気にひとつになった。
曲が終わると照明が落ち、山本の姿だけが浮かび上がり、アカペラで歌い上げる。「両手ひろげ東京、声上げろー。リミッターを外して! 歩けばその先に道は出来る」の一声を合図に、会場から一斉に「WOW!」が返ってきた。
「まだまだいくぞ。Are you ready!?」という煽りとともに披露されたのは「Are you ready!?」。ギターリフが鳴った瞬間、空気は完全に切り替わり、ホールは一瞬でライブハウスの密度へと変貌。演奏する側と観る側の境界が溶け、魂を交換するような熱が交差していった。

■「ドラマチックに乾杯」でステージを降りて客席へ
その熱を引き継ぐように「喝采」へ。観客の手拍子と声が自然に混ざり合い、リズム帯は一気に太くなる。跳ね返る低音、押し切るバンドグルーヴ。ラストに放たれた「これで満足か?」という一言は、観客への問いであると同時に、ロックシーンそのものへの挑戦状のようにも響いた。
その余韻を切り裂くように、Ayasaのバイオリンソロと、奥野翔太のベースが描き出す強烈なコントラスト。その流れを受けて「ゼロユニバース」へ。ステージには、晴れ渡る空を思わせる光が広がる。山本の真骨頂とも言える高音が、伸びやかに会場を突き抜け、天井へと放たれていった。
その余韻が会場に残る中、撮影OKのアナウンスが入ると、山本は「ツアーの感想と一緒に、SNSに上げてもらえたら嬉しいです。今日は、こんなすてきな夜を過ごせていることに乾杯したいと思います!」と呼びかけた。そして「ドラマチックに、乾杯!」と歌い出すと、ステージを降りて客席の中へ歩み出る。一人ひとりと目を合わせ、言葉を交わすように歌いながら、観客との距離を一気に縮めていった。
■「ライブがみんなにとって“また帰ってきたい場所”であったらうれしい」
続く本編ラストのMCで山本は「ライブで味わう2時間って、世界で一番短く感じます」と言って、穏やかな表情を浮かべながら「ステージに立つたび、想像を超える熱量で迎えてもらっていて、毎回驚かされています。今日は、その驚きをまた更新してもらいました。本当にありがとうございます。ソロとして一人で歩き出してから10年。最初は心細くて、“一人で戦わなきゃ”って思っていました。でもライブを重ねるうちに、私のライブは、私一人が作っているんじゃなくて、みんなと一緒に作っているんだって思えるようになりました」と思いを語った。
そして「今ではこの場所が“ホーム”だと思えています。1番じゃなくてもいい。このライブがみんなにとって“また帰ってきたい場所”であったらうれしいです。最後の2曲は、つらい時に一人で抱え込まなくていいように。そんな自分も愛せるように。そういう気持ちを込めて書いた曲です」と伝えて「サードマン」を披露。
ピアノとの静かな歌い出しから始まる壮大なバラードは、時間の流れをゆっくりと変えていく。間奏では草刈の“泣き”のギターソロが深く響き、その一音一音が、観客一人ひとりに語りかけるように染み渡っていった。翌29日の公演では、このパートに「Larimar」が据えられ、同じ文脈を持ちながらも異なる色合いで本編終盤を彩った。
本編ラストは「共鳴」。痛い夜も、つらい時間も、共に叫び、共に鳴き合えるように。その思いが歌声と拍手となって会場を満たしていく。ラストサビ前、山本はオーディエンスにマイクを向け、一緒に歌い、まさしく“共鳴”した。
■タイトルもない未発表曲を披露
アンコールの拍手に迎えられ、山本がギターを抱えてステージに登場。弾き語りで歌われたのは、まだタイトルもなく、完成もしていない未発表曲だった。「次に歌うのは、まだ世に出るかどうかも分からない曲です」と伝え、一人で過ごす時間の中で生まれた“虚無感”について語った。考え続けても変わらない感情に、自分自身で意味を与えるため歌にしてきたこと。
この曲も、完成する頃には形を変えているかもしれない。だから今夜は、“途中経過”のまま届けたい、と。ツアーで歌い続けるうちに「完成させてほしい」という声が各地から届き、それが大きな励みになっているという。今年中に形にし、次に聴いてもらえる機会へつなげたいという決意が感じられた。
再びバンドメンバーが呼び込まれ「レインボーローズ」を披露。ファンへの感謝と愛情を込めた演奏が、アンコールの空気を優しく温めた。2日目の公演ではこの楽曲のみ撮影OKとなり、会場にはより穏やかな高揚感が広がった。
アンコールのラストを飾った楽曲は、2日間で入れ替えられた。初日は「ヒトコト」で始まり「メロディー」で終幕。2日目はその順を反転させ「メロディー」で始まり「ヒトコト」で締めくくられた。始まりと終わりを入れ替えることで浮かび上がるのは“home away from home”というツアータイトルが示す循環と帰還の感覚。どこから来て、どこへ帰るのか。その問いに明確な答えを出すのではなく、一夜一夜の記憶そのものを「帰る場所」として差し出す。
最後は「今日は本当にありがとうございました。この思い出、記念に写真を撮ってもいいですか?」と呼びかけ、会場全員で「10周年!」と声を揃えて記念撮影を行った。そして、山本はマイクを通さずに「ツアーファイナル、本当にありがとうございました! また皆さんに会いましょう!」というメッセージを伝えてステージを後にした。

■「Sayaka Yamamoto Hall Tour 2025-26 "home away from home"」セットリスト
1月28日・29日 東京・LINE CUBE SHIBUYA
<1月28日>
M1.ヒトコト
M2.君とフィルムカメラ
M3.刹夏
M4.ラメント
M5.劣等感
M6.イチリンソウ
M7.stay free
M8.あいまって。
M9.Seagull
M10.JOKER
M11.Are you ready?
M12.喝采
M13.ゼロ ユニバース
M14.ドラマチックに乾杯
M15.サードマン
M16.共鳴
EN1/M17.タイトル未定
EN2/M18.レインボーローズ
EN3/M19.メロディ
<1月29日>
M1.メロディ
M2.yonder
M3.刹夏
M4.どうしてどうして
M5.スマイル
M6.イチリンソウ
M7.Homeward
M8.ブルースター
M9.Seagull
M10.JOKER
M11.Are you ready?
M12.喝采
M13.ゼロ ユニバース
M14.ドラマチックに乾杯
M15.Larimar
M16.共鳴
EN1/M17.タイトル未定
EN2/M18.レインボーローズ
EN3/M19.ヒトコト
◆文=池田鉄平

