物流業界などでは「すきまバイト」の需要が増えつつあるようだが、みんながみんな戦力になるとは限らない。
「仕事さえしてくれれば他(見た目・人間性など)は望まない」という雇用側の最低条件すら満たせないアルバイターも中には存在する。
「Aさんという40代の主婦がまさにそんな感じでした」と苦笑いで振り返るのは、某派遣会社の社員。彼が担当する地域ですきまバイトの就業を繰り返していたAさんはかなりの問題児だったという。
「どんな仕事を紹介しても『私には無理』とか『自分には向いていない』と途中で投げ出してしまうんです。もちろん適性に合わない職場に当たってしまうことはあるでしょうが、契約時間内は働いて欲しいじゃないですか? でも彼女の場合はそんなのはおかまいなしで、最短15分で職場放棄した『伝説のアルバイター』です」
20代半ばで結婚して以来、20年間専業主婦だったというAさんは「子どもの手が離れたので働こうと考えたけど、自分がどんな仕事に向いているか分からないので色々経験してみたい」という理由ですきまバイトに登録。
まずは「誰でもできる」という触れ込みの簡単な軽作業を中心にいくつかの案件に応募をして来たそうだが、「最初に就業した箱の組み立て作業は『手が痛くなったから無理』と言い出しました。箱を組み立てるには指先で折り目をつけたり、手のひらで押し込んだりと意外に力が要るのは確かなんですけど、1時間かそこらで音を上げられたらたまらないですよ」
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「どんな仕事ならできるんですか?」
次にAさんが就業したのは「部品の袋詰め」作業だったようだが「ずっと数を数えてたら目が疲れて肩こりがひどくなった」とドロップアウト。
懲りずに今度は「コンビニ商品のピッキング作業」に就業するも、「洗剤をカートに載せる時に重くて腰を痛めた」と言い残してさっさと退散。
さすがに「肉体労働は向いていない」と自覚したのか、Aさんが次に就業したのは「座って案内をするだけ」というイベントの受付だったが「段取りがややこしくて憶えられない」と開始15分でこちらもギブアップ。
「その場限りのすきまバイトとはいえ、これでは会社の信用にも関わりますのでAさんと面接をしたことがあるんです」
そこで「どんな仕事ならできるんですか?」と聞かれたAさん。派遣会社としては配慮のつもりだったそうだが「そんなのこっちが知りたいですよ!」とキレられて、彼は二の句が継げなかったという。
その後もAさんは懲りずに「シール貼り」や「伝票の仕分け」「販売アシスタント」などの仕事に就くも、どれも契約時間まで勤め上げたことはなかった。
「こちらとしても正直お手上げです。聞けばダンナさんは大手にお勤めで経済的にはまったく困っていないようでしたので『無理して外で働くことはないんじゃないですか?』とアドバイスさせて頂きました」
その後、Aさんの応募は途絶えたそうだ。
取材・文/清水芽々
清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。
