
“国民的アイドル”AKB48の絶対的センターとして一世を風靡し、2012年8月のグループ卒業後は俳優として活躍、2025年には芸能活動20周年を迎えた前田敦子が、13年ぶりとなる写真集「Beste」(講談社)を2月16日(月)に発売する。「今やらなかったら、もう一生ないだろうな」と半年かけて発売を決意し、“恋人との旅行”をテーマにオーストリアの首都・ウィーンで撮影。「洋服を着ている写真ならインスタでいい」と過去最大の露出に挑みながらも、作品としての美しさを追求した一冊に仕上がっている。“最後”と言い切る本作に込めた思いや、20年で感じた芸能界の変化、OGとして活動に加わる現在のAKB48についてなど、たっぷりと語ってもらった。
■13年ぶりの写真集は時間をかけて準備「簡単な気持ちでは出さない」
――13年ぶりの写真集発売を決めた経緯を教えてください。
私の芸能活動20周年ということでお話を頂いたと思うんですけど、「今年やらなかったら、もう一生ないだろうな」と思ったので、「ちゃんと向き合える時間があるんだったら」と半年ぐらいお話をして探らせていただいた上で、「いけるかな」と準備に入って撮影しました。
――慎重になっていた部分があったんですね。
もちろんです。そんな簡単な気持ちでは出しません。年齢的にも、やるとしたら最後のタイミングかなとも思いましたし、若いころと違って体作りをちゃんとしないと露出するのは難しい、という話をして、「時間をたっぷり取れるんだったら」ということで撮影に向けた準備をしました。

■20周年の節目に決意した「今しかできない表現」
――前作から13年の間にも写真集のオファーがあったのでは?
お話を頂いてはいましたが、私は全く出すつもりはなかったんです。
――今回発売を決めたのは、やはり20周年の節目というのが大きな理由の一つになったのでしょうか?
今年は「今やらなかったら、もうやらないんだろうな」みたいなことをいろいろとたくさんさせていただいていますが、いろいろなことをやっている中で、人間って「その時の良さ」というものが確実にあると思えたので、「じゃあ、今かな」と決断しました。
出来上がった写真集を見て、もしかしたら私自身は「うわっ」と思うかもしれませんが、10年後、20年後に見た時に「この時はこういうことで輝いていたんだな」という発見もあるのかなと思ったりして。“今”を納得できないのはみんながそうで、でも誰かにとっては、30代がすごく美しい世代になるのかなとか、いろんな人から見たらどう見えるのかなみたいなことを考えた上で、20代とはまた違った、大人としての自分を残すなら今が最後なのかなと思いました。
――将来に残すものとしてのタイミングを考えたんですね。
アイドルの時の自分は、音楽やPVなど、きっとこれからも残っていくだろうなというものがいっぱいあったんです。今、大人になって、ドラマや映画など残るものはいろいろとありますが、“歌”って特に残っていくものじゃないですか。流れが早い時代なので、一つの区切りとして写真集を残すことで、SNSとは全然違う自分を今の時代に出せるんだったらいいのかなと思っています。

■「最後の写真集」で挑んだ過去最大露出
――「過去最大露出」とも謳われていますが、露出を抑えた写真集という選択肢はなかったのでしょうか?
洋服を着ている写真ならインスタでいいですからね。大人の写真集だったら、女性の方が見て「このランジェリーいいな」とちゃんと思えるようなものにできるならと思って、今回は露出を増やす決意をしました。
――前田さんの中で挑戦的な撮影になったのでしょうか?
挑戦的ではないですね。「作品として」という感覚で挑んだので、逆に生々しさはなくて、意外とあっさり見てもらえるかもしれません。露出はしていますが、生々しさよりも「こういう部位がきれいだな」と思って見ていただけるとうれしいです。
――内容に関してご自身の意見はどのように反映されていますか?
盛りだくさんにはしたくないので、嫌なものは嫌だとはっきり伝えて、引き算をたくさんしています。「盛りだくさん」は若いころにやってきましたし、若くてキラキラしている子たちがやった方がいいと思うんです。私は大人としての最後の写真集にしたいので、落ち着いたものを作りたいなという思いがすごくあります。
――今回が最後だと。
最後ですね。絶対にやらないです。
――最後だからこそやっておきたい要素もありましたか?
私自身が「見てほしい」というタイプではないので、やっておきたいというよりも「やるんだったらちゃんとしたものを作ろう」という気持ちがすごくありました。

■「恋人とのウィーン旅行」がテーマ
――印象的だった撮影シーンを教えてください。
素顔の状態で撮影した写真もたくさんありますが、そっちの方が意外と抜け感があって、見やすいものになっているんじゃないかなという感覚があります。大人のキメキメでギラギラの下着姿をたくさん見たいですか?って思うんですよ。私の中ではそれがあまり分からなかったので、抜け感を作る必要があると思いました。
――確かにメークばっちりの下着姿は、自然体とは違う気もします。
足すことはいくらでもできるけど、引く難しさってすごくあるなと思っているんです。良い感じのバランスに、出しすぎず見せすぎず、でも気になる、みたいな写真集になったらいいなと。「こういうカットがあるよ」というより「見てもらってからどう思うか」という写真がたくさんあります。
――お話を伺っていると、「やりたいこと」というより「読者にとって必要なもの」を意識されているのかなと感じます。
キャピキャピする必要はないかなと思っていました。「大人の恋人同士が旅行に行っている」というのがテーマになっているので、大人の恋人同士で行くのにすてきな場所としてウィーンに行きました。キャピキャピ、キャハハというより、静かで、でもちゃんと見たくなるような写真集が作れたらいいなと思っていました。
――読者に恋人目線で楽しんでもらえるような内容なんですね。
そうですね。あまり言葉にしたくはないんですが、ありのままな写真はたくさんあるので、それでいろいろな見方をしていただければいいかなと思っています。

■AKB48結成20周年への思いと、変化し続けるエンタメへの視点
――2025年は、ご自身の20周年であると同時にAKB48の20周年でもあるタイミングで、OGとしてAKB48の活動に参加されました。これも、写真集を決めた理由に近い思いもあるのでしょうか?
OGとして参加するのは10周年の時以来ですが、AKB48に関しては「残したい」という思いより、今あるAKB48がもっと良くなったらいいなという思いから参加しました。「“あの頃のAKB48”のような感覚を取り戻してくれた」という喜びの声を頂けて、「やってよかったかも」と思いました。「懐かしい」みたいな気持ちから、“今のAKB48”を好きになってもらうきっかけになったらうれしいなと思っています。
――AKB48を卒業し、現在も芸能界で人々の前に立ち続けていますが、芸能界という存在に対する向き合い方が当時と変わったところはありますか?
芸能界の流れが変わったのが、私が芸能界に入ってからの20年だと思うんです。「エンタメ」という存在が大きく変わっていますよね。エンタメ自体が難しい時代になってしまっているんじゃないかなと思います。盛り上がるものがたくさんあるのはいいと思うんですけど、「みんなが一つのものに集中する」ことがなくなったと思うんです。私がAKB48の現役だった時が最後くらいで、「みんなが同じものを好き」という感覚は、今なかなか持てないんじゃないのかなって。
みんなそれぞれ好きなものはあっても、それが一つに集中することって、多分もうないんだと思うんです。私たちの時には「テレビを全く見ない」という選択肢はギリギリなくて、みんながテレビを見ていた時代でした。それが今はいろいろなプラットフォームを選べるようになったから、一つのものがバンと盛り上がるようなことは、これから先は難しいんだろうなと思います。
――“国民的アイドル”という存在が、今は生まれにくいということですね。
そうだと思います。
――エンタメ業界が変化する中で、芸能界で活動を続けるモチベーションはどこにあるのでしょうか?
現役時代、「センターにいたくない」とは思っていましたが、「芸能界を辞めたい」と思ったことは全然ないんです。でも、今は一線で活躍したいというタイミングでもないので、引きながら、冷静にいられるポジションではあるかなと思っています。自分の好きなことを仕事にできている喜びがすごくあるので、この仕事はすごく好きです。キャーキャーと黄色い歓声が欲しいというものではないので、まだまだやっていけるなという感覚がありながら、仕事をさせていただいています。

■好きなことを仕事に――飾らない等身大の自分で歩み続ける未来
――活動の中心は俳優業になるのでしょうか?
役者としてやっていますけど、一生役者としてという感じではないです。もちろん責任感はあるし、やるとなったらちゃんとやりたいと思っていますけど、もっとカジュアルに、今はどうなってもいい時代なのかなとは思っています。
――先々のビジョンは見えていますか?
何も決めていません。その時に出合った楽しい仕事をやりたいなと思っているんですけど、「こうなりたい」みたいなことは、昔からないですね。
――自分の好きなことを仕事にできている現在の前田さんが、20年前の自分に何か伝えたいことはありますか?
何もありません。あの時の私と今の私で何か変わっているかと言われても、そんなにたくさんは変わっていないかなと思うので、たとえやり直しても同じで、やりたいようにやっていくんだろうなと思いますし。でも、ずっと仕事を続けられているということに関しては、喜びを感じられるかもしれないですね。
――では、最後に写真集について読者に向けたメッセージをお願いします。
言葉で何かを伝えるというより、見ていただいた後に何を思うのかは、それぞれが自由に感じ取っていただけるのが一番ですが、「生身の人間もいいね」と感じてもらえたらうれしいなと思っています。体のパーツに関してはありのままではなく、とっても準備をしました。そうやって写真集を作っていて、「自分と向き合うっていいな」と私は思えたので、同性の方には「こんなパーツになりたいな」というモチベーションにしてもらえたらうれしいです。
◆取材・文=山田健史/スタイリスト=鈴木美智恵、ヘアメーク=足立真利子


