「受信料特別対策センター」を設置し、支払い督促による民事手続きを強化しているNHKが、来年度に全ての都道府県で過去最多となる2000件の受信料支払い督促を行うと発表した。
NHKによれば、昨年10月にこの特別対策センターを設置からわずか3カ月で、398件の支払い督促申立てを実行。その数は昨年1年間に行った件数の3倍だった、と鼻息を荒くしている。
実はそんな督促を手助けしていたといっても過言ではないのが、誰あろう、あの郵便局だったのである。では、その「カラクリ」を説明しよう。
郵便局で記入する転居届用紙は2枚綴りの複写式になっているものと、なっていないものとがある。問題は、2枚目が「NHK用の届出書」になっている場合だ。いったい何のことかと思うだろう。
つまり1枚目に書き込んだ新住所が複写される2枚目がなんと、NHKにも新住所を知らせるものになっているわけだ。そしてこれがNHKに共有されてしまう。利用者が2枚目を切り離さずにそのままポストへ投函、あるいは窓口に提出すれば、個人情報が郵便局とNHK両方に同時に届けられることになるわけだ。
日本郵便によれば、この仕様は1997年から導入され、2004年には全国展開されたそうで、名目は「利用者の利便性向上」。引っ越し作業などで忙しい国民が、一度の記入でNHKの手続きも済ませられるように、という「親切心」から生まれたものだというのだが…。
「もちろん2枚目を切り離して破棄すればいいのですが、複写になっていることを意識せず、まとめて提出してしまう人が多い。郵便局の窓口でそのまま受理されるケースは多かったようです。よく『引っ越した翌日にNHKの集金人が来た』という笑い話の裏には、そんな事情があったというわけです」(社会部記者)
さすがに近年になって、この官民連携の追跡システムに対して「個人情報の横流し」との批判が相次ぐようになったが、20年以上にわたり、この「転居届」がNHKの督促ターゲット特定に大きく貢献してきたことは間違いないだろう。
さらに、これまで「テレビがない」と突っぱねてきた単身世帯も、昨年10月に始動したネット配信サービス「NHK ONE」をスマホで利用すれば、その瞬間に契約義務が生じることとなった。
そんな包囲網を操るのが、冒頭で触れた「受信料特別対策センター」というわけだが、テレビ離れが加速する中、こんな方法での督促がはたして、NHKが掲げる「公平な負担」への近道となるのか、あるいは国民との完全な決別への一歩となるのか。
その答えは、NHKがブチ上げた「2000件の受信料支払い督促」の結果が示すことになるだろう。
(灯倫太郎)

