特殊な飲水システムを持つ魚類たち

しかし、一般的な海水魚や淡水魚のように、単純な浸透圧の仕組みだけで、水分を摂取している魚類ばかりではありません。その特殊な魚類とは、軟骨魚類と、淡水域と海水域を行ったり来たりする魚類です。
まずサメ、ギンザメ、エイなどの軟骨魚類は、あまり水を飲む必要がありません。
それは、軟骨魚類は、体内にアンモニアの塩辛い副産物である「尿素」を高濃度で溜め込むからです。こうすることによって、彼らの体液は海水の同じ濃度になり、浸透圧を調整する必要がないのです。
サメはアンモニア臭いと言われることがありますが、これがその理由です。
また、アユ、サケ、ウナギ、ボラ、スズキ、ミドリフグなど、淡水と海水を行ったり来たりする魚類たちは、周囲の環境の変化に合わせて、浸透圧調節を器用に切り替えることができます。
つまり水中で生活するどの魚類も基本的には喉が乾いて水が必要になりますが、「浸透圧」の仕組みを上手に利用して水分の摂取量を調整しているのです。
しかし、浸透圧の働く「向き」が、淡水と海水では異なっています。周囲の環境に適応できた生物だけが生き残り、進化してきた例の1つと言えるでしょう。
参考文献
Do fish get thirsty?, Kiley Price
https://www.livescience.com/animals/fish/do-fish-get-thirsty
なぜ魚が川や海で生きられるのか?を解く, 宮崎大学 農学部 海洋生物環境学科
https://www.miyazaki-u.ac.jp/agr/books/book-fishery/post-48.html
淡水魚、海水魚の違いとは!どうしてその水じゃないと生きられないのか?浸透圧を解説!, 東京アクアガーデン
https://t-aquagarden.com/column/salinity
サメが「アンモニア臭い」と言われるワケ 尿素を体内にため込むから?, TSURINEWS
https://tsurinews.jp/126247/
サメたちはどのようにして海という環境に適応しているのか
https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/37/sc37-1.pdf
元論文
魚類の浸透圧調節とセシウムの排出, 金子豊二
https://www.jstage.jst.go.jp/article/swsj/69/4/69_238/_pdf/-char/ja
Osmotic stress sensing and signaling in fishes, Diego F. Fiol
https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1742-4658.2007.06099.x
ライター
山﨑 実香: 山﨑 実香(やまざき みか) 1991年 東京都 日野市生まれ。 東京大学 大学院 農学生命科学研究科 修士課程 修了後、大手学習塾が運営する科学実験教室の教室長などを務める。 その後、専門である生物学を中心に科学の解説記事を執筆するサイエンスライター、大学職員、フリースクール理科実験講師などとして活動。 歌うことが好きで、運動が苦手。 HP https://mikayamazaki.crayonsite.com/
編集者
ナゾロジー 編集部

