福島の海と聞いて、どんな景色や人の姿を思い浮かべるでしょうか。
豊かな恵み、美味しい魚、そしてそれを支える多くの人たち。けれど、その魅力や現状を、自分の言葉で説明できる人は意外と多くないのかもしれません。
そんな中、福島の海を「知ること」「伝えること」に真正面から向き合っている団体があります。一般社団法人ふくしま海と緑のプロジェクトです。海を守る活動というと難しく聞こえますが、同団体が大切にしているのは、まず関心を持ち、身近に感じてもらうこと。その想いは、子どもたちに向けた取り組みにも色濃く表れています。
今回行われたのは、福島大学の学生たちが小学校を訪れ、福島の海について伝える出前授業。単なる学習の場ではなく、海と人、そして未来をつなぐための一歩として企画された取り組みです。
この授業がどのような背景で生まれ、どんな学びにつながったのか。そのプロセスを追っていきます。
なぜ「福島の海」を伝え続けているのか

海を守る活動と聞くと、環境問題や専門的な取り組みを思い浮かべる人も多いかもしれません。けれど、一般社団法人ふくしま海と緑のプロジェクトが大切にしているのは、もっと身近なところから始まる視点です。
同団体が取り組んでいるのは、「福島の海を知ること」そのものを広げていくこと。魚や自然環境、漁業に関わる人たちの存在を知り、海が暮らしとどうつながっているのかを感じてもらうことを出発点としています。難しい知識を押し付けるのではなく、関心を持ち、考えるきっかけをつくる。その積み重ねが、未来へとつながっていくという考え方です。
特に力を入れているのが、次世代を担う子どもたちへのアプローチです。幼い頃に触れた体験や記憶は、その後の価値観に大きな影響を与えます。福島の海を「遠い存在」ではなく、「自分たちの身近なもの」として感じてもらうことが、将来の選択や行動につながる。そんな想いが、さまざまな体験型の取り組みに反映されています。
今回の出前授業プロジェクトも、そうした活動の延長線上にあります。イベントを行うこと自体が目的ではなく、福島の海と人とを結び直すための一つの手段。その背景には、海の魅力や現状を正しく、前向きに伝えていきたいという、団体としての一貫した姿勢があります。
想いを“学び”に変えるための準備──福島大学生の事前学習

子どもたちに何かを伝えるためには、まず伝える側が深く理解している必要があります。今回の出前授業プロジェクトでは、その前提をとても大切にしていたことが印象的です。授業を担当したのは、福島大学の学生たち。彼らは、いきなり教壇に立ったわけではありません。
プロジェクトが動き出したのは、出前授業よりも前の段階でした。学生たちは、福島の海や魚、いわゆる「常磐もの」について理解を深めるため、それぞれ担当する魚種を決め、調べ、話し合いを重ねていきました。文献を読み、意見を交わしながら、「何をどう伝えれば、子どもたちに届くのか」を考える時間が設けられていたのです。
このプロセスには、「正確に伝えること」と同時に、「自分の言葉で語れるようになること」が求められていました。単に知識を集めるのではなく、福島の海の魅力や課題について自ら問いを立てる。その姿勢そのものが、今回の取り組みの大きな特徴だったと言えそうです。

さらに、学びを深めるためのサポートとして加わったのが、さかな芸人として知られるハットリさんの存在です。専門的な内容を、どうすれば親しみやすく伝えられるのか。ユーモアや視点の切り替えを交えながら、学生たちの理解を後押ししました。難しい話を、難しいままにしない。その工夫が、後の授業づくりにも生かされています。
こうした準備期間を通して、出前授業を担当した学生たちは、「教える立場」であると同時に、「学び続ける立場」でもありました。福島の海について知れば知るほど、その背景にある人の仕事や想いが見えてくる。だからこそ、子どもたちに伝えたい言葉も、自然と具体性を帯びていったのではないでしょうか。
団体が大切にしている「知ることから始める」という考え方は、この事前学習の段階ですでに体現されていました。出前授業は、その延長線上にあるもの。学生たちは、団体の想いを自分たちなりに受け取り、それを次の世代へ手渡す役割を担っていったのです。
