かつてはワールドカップレース転戦、2018年から全日本アルペンチームのヘッドコーチとして再び雪上へ。翌年オーストリア・インスブルックに移住し、現在では日本総代理店としてケスレスキーを展開している浦木健太(うらきけんた)。海外からのグローバルな視点で、最新情報や興味深い話題をお届けしていく。
極限の技術とスピードを支えるアルペンギアの秘密

2026年2月6日、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックがいよいよ開幕する。日本では、メダルの期待がかかるスノーボードやスキージャンプに注目が集まりがちだが、ヨーロッパにおいて「冬の絶対的な主役」といえる存在がアルペンスキーだ。ヨーロッパアルプス圏を中心に、アルペンスキーはサッカーと並ぶ国民的スポーツだからだ。

FISのワールドカップは国営放送で生中継され、トップ選手は国を代表するスーパースターとして扱われる。それが冬季オリンピックともなれば、その熱狂ぶりは桁違いだ。今回は、ミラノ・コルティナオリンピックに向けて、アルペン界のトップ選手たちが使用している「ギア」に焦点を当ててみる。極限の技術とスピードを支えるスキー板やスキーブーツには、一体どのような特徴や秘密が詰め込まれているのだろうか。
トップ選手が使用するスキー板の特徴は?

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アルペンスキーのレースでは、コースが何人滑っても荒れないよう、事前に大量の水を撒き、硬く締まった“氷の斜面”を造り上げる。ワールドカップともなれば、その硬さはさらに増し、鋭く研ぎ澄まされたエッジでなければ、上級者であっても横滑りで降りてくることすら不可能だ。
そんなコースを時には140km以上のスピードで滑り降りてくるアルペンスキーだけに、トップ選手が使用するスキー板は、一般スキーヤーが手にする市販モデルとはまったくの別物だ。アルペンスキーには、回転(SL)、大回転(GS)、スーパー大回転(SG)、滑降(DH)の4種目があり、それぞれFIS(国際スキー連盟)が定める厳格な規定のもと、種目ごとに板の長さやサイドカーブが明確に決められている。
アルペンワールドカップは、選手の戦いであると同時に、スキーメーカー同士の技術競争の最前線でもある。各メーカーは日々研究を重ね、使用するマテリアルや構造を細かく変更しながら、テストを繰り返している。現在のレーシングスキーは、ポプラやビーチといったウッドコアをベースに、チタン、グラスファイバー、カーボンなどを組み合わせた多重構造が主流。その上にトップシート、滑走面、サイドウォール、エッジが、極めて高い精度で組み上げられている。
これらのバランスを緻密にコントロールすることで、フレックスとねじれ剛性を高め、硬い氷の斜面で最大限のエッジグリップを引き出す。それがレーシングスキー最大の特徴だ。さらにトップレベルでは、選手ごとにフレックスや内部構造が微調整され、同じブランド、同じモデル名であっても「中身は別物」というケースも珍しくない。
このあたりで、前回の北京五輪の映像からアルペンシーンのイメージを膨らましていこう。
