身を守るために進化する選手専用ギア

アルペンスキーは、華やかさの裏で常に大きなリスクと隣り合わせの競技でもある。高速でのクラッシュから身を守るため、防具類も進化を続けている。'25-26シーズンからFISが定めた新規定により、スピード系種目ではエアバッグシステムの着用が、また全種目において耐切創性アンダーウェア(下半身)の着用が義務化された。
エアバッグシステムは、レーシングスーツの下に着用し、衝突の危険を検知すると、ジャケット内部のエアバッグが瞬時に膨張する。胴体、肩、背中を覆うことで、重傷を防ぐ仕組みだ。加速度計、ジャイロスコープ、GPSを備え、コントロールユニットは毎秒1000回の頻度でセンサー情報を監視し、差し迫った衝突を検知する。高速系種目では、上半身が盛り上がって見えるのがそれだ。
耐切創性アンダーウェアは、特殊繊維を使用し、スキー板のエッジによる切創や裂傷から身体を守る。規定がなかった数年前、私はワールドカップのコース内で、転倒した選手が自身のエッジでふくらはぎを深く切り、止血ができずヘリコプター搬送される場面に立ち会ったことがある。それ以来、その選手は雪上に戻っていない。
ヘルメットやバックプロテクターを含め、身を守る専用ギアは、氷の斜面を躊躇なく攻める選手たちにとっては欠かせない存在となっている。アルペンスキーは、選手の技術やメンタルだけで勝敗が決まる競技ではない。スキー板、ブーツ、プロテクター……ギアとの“共同作業”によって、0.01秒を削り合う世界が成立している。

(VAN DEER-Red Bull Sports提供)
最後に
ミラノ・コルティナ冬季オリンピックでは、選手の戦いに加え、どのブランドのスキーやブーツが表彰台に立つのか、どのようなギアで勝負しているのかも、大きな見どころとなるだろう。選手たちのギアに注目することでオリンピック観戦が何倍もおもしろくなるはずだ。また、これまであまり縁がなかったとしても、アルペンレースをちょっと観てみようかな、と思ってもらえたら幸いだ。
