最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
「あなたとひとつになりたい?」ホラーで描いたラブストーリー 映画『トゥギャザー』

「あなたとひとつになりたい?」ホラーで描いたラブストーリー 映画『トゥギャザー』

映画『トゥギャザー』が2月6日に公開となる。本作は、恐怖映画のサブジャンルであるボディー・ホラーの「身体の突然変異」と恋愛の「共依存」を融合させたジャンル・ミックス型ホラーだ。

長年連れ添ってきたミュージシャン志望のティム(デイヴ・フランコ)と小学校教師のミリー(アリソン・ブリー)が、住み慣れた都会を離れ、田舎の一軒家に移り住む。ところが森で道に迷い、不気味な地下洞窟で一夜を過ごした直後から、2人の穏やかな日常が暗転する。

超自然的な肉体変異現象に見舞われた倦怠期の男女は、”感情は離れても、肉体はくっついていく”というシュールで皮肉な極限状況に陥ってしまう。予想のはるか斜め上を行くスリルとサプライズ、ブラックユーモアを提供しながらも、恋愛の深層心理をリアルに追求しているから、誰にとってもわかりやすい。

唯一無二の映画体験に引きずり込む本作には、ただの恐怖映画として紹介するには忍びない魅力が、確かにある。

人生を共有する者と引き裂かれたら

本作『トゥギャザー』で長編映画デビューを果たしたシャンクス監督によると、本作のストーリーのアイデアは、自身とパートナー、その周囲の関係性から生まれたそうだ。

「私とパートナーとは高校卒業後から17年目の付き合いになりますが、常に一緒に生活し、同じ空気を吸い、交友関係も一緒で長年変化がない状態を過ごしてきました。どこで僕が終わり、どこから彼女が始まるのか境界が曖昧になり始めたときに、『人生を共有する』というテーマについて考え始めました。さらに、私たちと近しい友人たちも高校時代からの恋人と交際を続けている人が多いのですが、ある友人カップルが破局したとき、片方とは交流が続きますが、片方とは会えなくなってしまいました。それを見て『彼らは自分の一部をはぎ取られるような感覚なんだろうな』と想像して、少し恐ろしく感じ、それも物語の起源となったんです」

とまあ、本作が純粋なラブストーリーなら素直に素敵な前日譚だなと思うのだが、本作は紛れもなくホラーである。美しさだけで終わるわけもない。ただ、『トゥギャザー』の魅力のひとつがここにある。見た目の気持ち悪さとは裏腹に、セリフだけ見ると倦怠期のカップルが互いの愛情を取り戻そうとしているだけのラブストーリーなのである。

「君が欲しすぎて全身が渇いている」「心と肉体がバラバラみたいだ」「肉体がいうことを聞かない」「肉体が引き合っている」

本作では文字通り、”ひとつになろうとする”現象が発生する、肉体が同化していくボディー・ホラー。一見、どうかしている設定だけれども、妙齢でセックスレスの倦怠期カップルというフィルターを通すことで、”離れ離れのものが引かれ合う”ということを観客に伝わりやすくしている。設定が込み入りがちなホラー作品はあるが、このわかりやすさは、本作の魅力のひとつでもある。

他者と引かれ合うこと、つまり愛(エロス)について本編では、哲学者プラトンの「饗宴」で語られるアンドロギュノスを例に説明される。

性別は3種類。男性、女性、両性具有がいて、頭が2つ、手足が各4本あるアンドロギュノスは、全知全能の神・ゼウスに2つに切り裂かれ、人間は今の形になった。だから我々は肉体の片割れを探し求める。この存在をツインレイと言ったりもする。つまり、人間は本質的に不完全であり、その不完全性を補い、理想の完全体に近づこうとする欲求が愛なのだ。

物語終盤の「『君なしでは俺ではなくなる』と思っていた……」と言い放った男の決断と行動は、とても美しい。例えスクリーンに映し出される映像がグロテスクであってもだ。

それでもしっかりホラー作品である

愛だの恋だの述べたが、作品冒頭から嫌な雰囲気がたっぷりだ。山々に張り巡らされた森林の木々の枝が、根っこが、肉体を這う血管のように見えてきて不穏な空気を劇場に充満させる。『トゥギャザー』はしっかりホラーの要素を兼ね備えている。

行方不明のカップル、怪奇を知らせる子ども、隔離された過疎地域、カルト宗教、怪しげな隣人、心霊現象、そしてチェーンソー……etc. そしてホラーでは死とともにエロスが描かれるのがお約束だ。2人の肉体が結合するとき、皮膚一枚下に潜り込み、相手の肉体を愛で、撫で回すように結合する。そのさまは情熱的で官能的だ。

ティムは30半ばでロックスターを夢見るダメ男、ミリーは少し神経質な面持ちの女教師。セックスレスのカップルはともに癖があって、どこか陰鬱。本作はパリピが殺人鬼に無慈悲に襲われる話ではないことが、この関係性からもわかるだろう。

M・ナイト・シャマラン、ジョン・カーペンター、スタンリー・キューブリックが大好きというシャンクス監督は、Jホラーからの影響も多分に受けており、初めて観た『リング』にハマり『呪怨』シリーズなど数々のJホラーを観漁ったそうだ。なかでも三池崇史監督の『オーディション』を絶賛し、本作のあるシーンでは、黒沢清監督の『回路』のオマージュを公言している。

となると、ミリーの瞳が大きく面長ロングヘアーといったビジュアルは、『キャリー』のシシー・スペイセク、『シャイニング』のシェリー・デュヴァルに由来するものではないのか? 肉体が引かれ合うあのシーンは、『エクソシスト』のスパイダーウォークと『リング』の山村貞子のミックスなのか? そんな考察がはかどる部分が本作には多々ある。ホラーは模倣が観客に許されているジャンルだ。そこかしこにちりばめられているホラー好きのエッセンスを探すのもまた楽しい。

配信元: otocoto

あなたにおすすめ