
仕事や家事の合間に、気づくと「ふんふん〜♪」と鼻歌を口ずさんでいる。そんな経験は日常的に多くあるはずです。
実はこの何気ない行動が、ストレスを和らげ、心と体を落ち着かせる働きを持つ可能性が、心理学や生理学の観点から注目されています。
鼻歌は単なる癖や気晴らしではなく、私たちの神経系や呼吸、血流に影響を与える行為だったのです。
目次
- なぜ鼻歌でリラックスできるのか?
- 鼻歌は呼吸と体内環境にも影響する
- リラックス効果を高める「鼻歌」のやり方とは?
なぜ鼻歌でリラックスできるのか?
鼻歌がリラックスにつながる理由の一つは、神経系への作用にあります。
人が強いストレスを感じると、身体は「闘争・逃走反応」と呼ばれる状態に入り、心拍数の上昇や筋肉の緊張、思考の過活動が起こります。
一方、鼻歌のような穏やかな発声は、副交感神経系の働きを支える方向に作用すると考えられています。
副交感神経は、心拍数を下げ、筋肉を緩め、安心感をもたらす役割を担っています。
この働きに関与するとされるのが、脳から顔、喉、胸、腹部へと伸びる迷走神経です。
鼻歌を歌う際に生じる喉や胸の振動は、迷走神経の経路を通じて心臓や内臓に伝わり、身体を落ち着いた状態へ切り替える信号として働く可能性があります。
実際、心拍変動と呼ばれる指標を用いた研究では、鼻歌を含む呼吸法を行うことで心拍変動が高まることが報告されています。
心拍変動は心拍と心拍の間の微細な揺らぎを示す指標で、この値が高いほど、神経系が柔軟にストレスへ対応できている状態とされています。
鼻歌によってこの値が上昇することは、精神的な落ち着きだけでなく、身体的にもリラックスした状態に近づいていることを示唆します。
鼻歌は呼吸と体内環境にも影響する
鼻歌の効果は神経系だけにとどまりません。
注目されているのが、鼻腔や副鼻腔で生成される一酸化窒素の増加です。
鼻歌を歌うと、鼻の内部の空気の流れが変わり、一酸化窒素の産生量が大きく増えることが知られています。
一酸化窒素は血管を拡張し、血流を促進する働きを持つ物質で、組織への酸素供給を助けるほか、炎症や微生物への防御にも関与するとされています。
ヨガの呼吸法として知られる鼻歌型の呼吸では、静かな呼吸と比べて、鼻腔内の一酸化窒素量が大幅に増加することが報告されています。
これにより、呼吸が楽になり、体への負担が軽減される可能性があります。
また、特定のゆっくりとした呼吸リズムで鼻歌を行うと、単に呼吸をゆっくりする場合よりも、心拍変動がより大きく変化することも示されています。
こうした変化は、鼻歌が精神面と身体面の両方に働きかけていることを裏付けています。
鼻歌のリズムや振動は、頭の中で繰り返される不安や心配の思考を断ち切る助けにもなります。
一定の音と振動が内側の雑音のように作用し、注意が自然と呼吸や感覚に向くことで、心が静まりやすくなると考えられています。

