なぜ日本チームは強いのか


日本がこれほどまでに強さを発揮している最大の理由は、エアマットのジャンプ施設の充実にある。2003年に世界で初めて開業したエアマットジャンプ施設「神戸キングス」を皮切りに、各地域で施設整備が進み、年間を通じて安全にジャンプ練習ができる環境が整った。
それに伴い、各地域に専門性の高い指導者が育ち、ちいさい頃からエアマットで練習を重ねてきたキッズスノーボーダーが多く生まれた。自分は彼らを「エアマットネイティブ世代」と呼んでいるが、彼らが安全かつ高い質でジャンプ技術を磨ける環境ができたことは大きい。世界を見渡しても、ここまでサポート体制が体系的に整った環境は珍しく、この優位性はすくなくともあと数年は続くとみている。
また、日本はこの種目の指導者の数が非常に多い国でもある。海外のコーチと話すたびに、その点には驚かれる。この種目における日本人選手のレベルの高さは、各地方で選手を支えてきた指導者たちの存在によるところが大きい。これは間違いのない事実である。
代表的な例を挙げるなら、長谷川帝勝や村瀬心椛の専属コーチを務める阪西翔氏、岩渕麗楽や深田茉莉の専属コーチを務める佐藤康弘氏など、ほかにも多くの優れた指導者が国内に数多く存在する。
決して代表チームの育成構造やシステムによるものではない。本来であれば代表レベルでする指導を、地方の指導者が日常的にしてきたことで、育成の裾野と密度が大きく広がった。チームに関わる立場として、常に感謝を抱いている部分でもある。
施設が生まれ、そこに指導者が育ち、各地から高いレベルの選手が輩出される。結果として国内の競争が生まれ、その競争を勝ち抜いた選手が、そのまま世界で戦える選手になっている。国内の練習環境、地道に練習を積み重ねられる国民性、フィジカル差が出にくい競技特性。これらが相まって、この種目が発展してきたと考えている。
とはいえ、すべての環境が世界水準にあるわけでもない。
雪上での国内環境は、他国と比べると大きく劣る。日本の湿度の高い気候、降雪によるコース維持の難しさ、標高の条件など、さまざまな要因が重なり、いまだに世界大会が開催できるような雪上コースは実現していない。世界水準のコースを製作するには維持費もかかり、ビジネスとして成立させづらいことも影響しているだろう。そのなかでもこれだけの結果を残していること自体が、エアマットのジャンプ施設で質の高い練習ができている証明である。もし国内に世界最高水準の雪上環境が整ったとしたら、日本はどこまで強くなるのだろうか。

Photo:Dasha Nosova/@fisparkandpipe
ミラノ・コルティナオリンピックでの戦いの見どころ
ミラノ・コルティナオリンピックにおける見どころを、種目別に整理していきたい。
まずはオリンピック序盤に開かれ、最も活躍が期待されているビッグエア種目。
ビッグエア種目は3本の試技のうち、異なる回転方向のベストラン2本の合計で争うルールとなっている。ジャンプ台のサイズによって回転数は変わるが、現時点で発表されているコーススペックを見る限り、女子は一方向で1440(4回転)を決めたうえで、もう一方向になにを持ってくるかが勝負の分かれ目になるだろう。
日本人選手に加え、昨年のビッグエア種目年間チャンピオンであるMia Brookes(イギリス)、世界一と呼び声の高いZoi Sadowski-Synnott(ニュージーランド)、前回の北京オリンピック・ビッグエア種目チャンピオンであるAnna Gasser(オーストリア)といった選手たちが表彰台を争うことになるに違いない。
男子はさらに熾烈な戦いが予想できる。今季のW杯では2160(6回転)を完璧に決め切った選手はいないが、オリンピックの決勝ではまずトリックを成功させることがひとつの鍵になるだろう。そのうえで、もう一方向に何なにを組み合わせるのか。飛び抜けるためには、どこかでリスクを背負ったチャレンジが求められる局面が必ず訪れる。
日本人選手の表彰台独占も十分にあり得るが、その中なかで大きな壁として立ちはだかるのは、前回の北京オリンピックチャンピオンであるSu Yiming(中国)である。2025年12月に開かれたビッグエア2戦では圧巻の2連勝を飾った。自国開催のプレッシャーがあるなかでの優勝は、彼の強さを物語っている。
スロープスタイル種目も男女ともに激戦となる。今回発表されているコースは、近年のなかでは比較的シンプルな設計であり、トリックの差がそのまま点数に反映されやすい。とくにスロープスタイル種目ではジブセクションの構成が重要となり、バリエーションと完成度が厳しく問われる。単に最後までレールの上に乗っているのかではなく、板のズレやレール上での踏み込み、それらのトリックバリエーション、細部まで求められる。 スロープスタイル種目は誰が勝つのか本当に分からない。 それがこの種目の面白さでもある。
