今回のテーマは「コートサーフェス」です。サーフェスの種類が違うと、テニスそのものがまるで変わってしまうくらい、大きな影響があります。
テニスは異種類サーフェスで行なわれる、数少ない競技。世界の公式大会でも「ハード」「クレー」「天然芝」と、異なったサーフェス環境で行なわれています。
現代テニスの原型ができるまでの「リアルテニス」は、貴族が宮廷で行なう遊戯で、石の床を壁で囲んだ室内で楽しまれていましたが、19世紀後半に、英国上流家庭のホームパーティーの遊戯的イベントとなり、自宅裏庭の芝で行なわれるようになって大ヒット。それが「天然芝コート=グラスコート」の始まりです。
またフランスでは、天然芝ほど管理が難しくない「土のコート=クレーコート」が多くできます。土といっても、レンガを細かく砕いたレッドクレー、あるいはアンツーカーと呼ばれるものを敷き詰めて固めたサーフェスです。
ただスピードテニスの時代になると、滑りやすかったり、イレギュラーバウンドが多いという問題に対処するため、天候に左右されず、表面が安定して平坦な「ハードコート」が増えました。やがて国際舞台ではインドアの試合も多くなり、そこでは「インドアハード」が使われ、常設の場合と臨時設置の場合があります。
テニスブームによりあちこちにコートができ始めた当時の日本では、農地などから容易に造成できる「クレーコート」が主流でした。でも上質なクレーコートは少なく、粘土を固めたようにカチカチだったり、土埃で靴やソックスが汚れるとか、水はけが悪いなどの理由で、どんどん減っていきました。
テニスクラブが元気だった時代には、全天候型と謳ったハードコートが増えましたが、私営のクラブが減り、公共団体によるパブリックコートが多くなると、小雨でもプレーでき、雨上がり後30分ほどで使用できる「砂入り人工芝コート」が圧倒的に多くなりました。粗めの密度で作られた人工芝の隙間に、砂を充填することで透水性を高め、整備も容易なのが、砂入り人工芝コートです。
日本の一般テニス愛好家の高齢化による“優しいサーフェス”を求める声の多さや、運営側にとっての稼働利便性が、必然的な砂入り人工芝増加につながりました。海外トップレベルの高速テニスにはハードコートでの育成が必要と叫ばれる一方、適度なゆったり感でテニスを楽しめる砂入り人工芝コートを欲する愛好家が圧倒的に多い日本の需要環境では、今後もこの状況が安定していくでしょう。
全国的にテニスクラブが激減している近年、逆に増えているのが「インドアテニススクール」です。どんな天候でも確実にプレーできる稼働率100%。
そのサーフェスに多く利用されているのが「カーペットコート」です。コンクリートなどの基礎上に、高密度なナイロン素材でできているカーペットを敷いて作ります。足裏に感じるクッション感や、バウンドの速さ、跳ね方などが、安定するべくコントロールされているため、運営側に重用され、プレーヤー側からも求められるようになっています。
サーフェス自体も汚れにくいカーペットコートは、プレーヤーが転んでもウェアが汚れることはありません。また白線は鮮やかに見えやすく、コートの色も選択肢が多く、個性を表現しやすいのも、カーペット製ならではのことです。
また「インドア人工芝コート」というのもあります。言ってみれば「砂なし人工芝コート」で、砂入り人工芝に使われる芝よりも圧倒的に高密度の芝で、倒れにくく、クッション感も高いのが特徴です。
こうしたサーフェスの違いは、フットワークに大きな影響を与えます。それぞれのサーフェスに適切なグリップ&スライド性があるため、それに応じた設計のアウターソールパターンを装備したシューズが必要となります。
多くの方が誤解されるのが「オールラウンド用」と呼ばれるタイプですが、「どんなサーフェスでもバッチリよ!」という意味ではありません。基本的にはオールラウンド用は「ハードコート用」と考えるのが適切で、クレーや砂入り人工芝で履くのは「応急の場合には仕方ない」と思ってください。
一番危険なのはカーペットコートで「クレー/砂入り人工芝用」を履くことです。これではあまりにグリップ性が高く、ソールがサーフェスに引っかかりすぎて、転倒や捻挫などの原因となります。
カーペットコートでは必ず「インドア用」を履き、どうしようもない時は、溝が浅くて少ないオールコート用を履くように心掛けましょう。
文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2024年7月号より抜粋・再編集
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